人口大国は「発展途上国」に多い! なぜ?
世界には人口1億人を超える国が14ヵ国存在します。この中でOECD(経済協力開発機構)加盟国はアメリカ合衆国、メキシコ、日本の3ヵ国です。人口大国は一般的に発展途上国に分類される国が多いことがわかります。下図を見てください。
機械化の進展が遅れ、依然として労働集約的な農業が中心の国では、子どもが労働力として期待されるため出生率が高い傾向にあります。
また、医療技術の進展や医薬品の普及などによって乳幼児の死亡率が低下し、これが劇的な人口増加の背景となっています。
アメリカ合衆国は移民が多いこと、ヒスパニック系やアフリカ系を中心に多産の傾向にあることなどを背景に、今後も人口増加が続くと考えられています。
特に人口が急増している国として、パキスタン、ナイジェリア、フィリピンがあげられます。国際連合によると、2050年の3ヵ国の人口はパキスタンが3億3801万人、ナイジェリアが4億131万人、フィリピンが1億4448万人にまで増加すると予測されています。
フィリピンは国民の約8割がカトリックを信仰しており、彼らは人工妊娠中絶だけでなく避妊にも否定的な考えを持っています。
さらにフィリピンでは「大家族主義」の価値観が根づいていて、出生率が減少傾向にあるものの、依然として高い水準にあります。パキスタンやナイジェリアでは子どもを多くもうけることで「働き手」を確保しようとするため、避妊などを拒絶します。
これは3ヵ国に限った話ではありませんが、発展途上国ではよく見られる傾向です。
ロシアに学ぶ「少子化対策」
一方、上位国の中で、人口の微減傾向が見られるのがロシアと日本です。
高齢社会白書によると、日本の人口予測は「2030年:1億1913万人」「2040年:1億1092万人」「2050年:1億192万人」と減り続け、2055年に9744万人と、1億人を下回るとされています。
一方、ロシアは「母親資本」の導入によって出生率がV字回復しています。
「母親資本」とは、2007年よりロシアで始まった出生率の改善を目的とした政策のことです。受給要件を満たせば、第2子を産んだ際に、100万円程度の補助金がもらえます。
ロシアの業種別平均年収と比較すると、この額は年収の0.5~2倍に値します。第3子以降に関しては教育費の援助や土地の無償供与など別の優遇策があります。日本は依然として少子化対策への「本気」が見えてこない状況にあります。
(本稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)