アクティビスト(物言う株主)の村上世彰氏のグループに狙われた中堅ゼネコンの西松建設。村上氏グループによる株の買い増しは今年11月まで休止されるが、残り4カ月間で対策に迫られる。繰り出す次の手について西松関係者が明かす。(ダイヤモンド編集部 松野友美)
ゼネコンvsアクティビスト
西松建設がターゲットに
ゼネコンと物言う株主(アクティビスト)の緊張関係の中で、今年の“主役”となるのは中堅ゼネコンの西松建設だろう。2019年11月以来、投資家の村上世彰氏の娘である野村絢氏や村上氏と関係がある旧村上ファンド系投資会社シティインデックスイレブンスなどが西松株を買い増ししている。村上氏グループは合計すると5月時点で西松株の24%弱を保有した。
ゼネコン業界には、内部留保をため込んだ“金持ち会社”が複数存在する。具体的には、キャッシュリッチであることを表すPBR(株価純資産倍率)値が1倍を割る会社だが、その数は上場している建設業170社中112社(全市場、6月28日16時時点)。西松もそのうちの1社だ。
こうした会社の株はアクティビストから「底値で買える株」や「仮に会社が解散してももうかる株」と見られやすい。
近年、ゼネコン業界においてアクティビストが保有株数を徐々に増やしているのは、西松のほか準大手ゼネコンの安藤ハザマや中堅ゼネコンの大豊建設、淺沼組、世紀東急工業などがある。買っているのは投資家の村上世彰氏やその関係者が運営するファンドのほか、海外ファンド、光通信やその関連会社などだ。
アクティビストの中にはゼネコンに対して自社株買いや社外取締役を増やすなどの提案を行うこともある。株を買われた会社は、短期売買でもうけるための手段にされるのではないかと戦々恐々だ。
西松においても警戒感があらわになった。村上氏グループがさらに株を買い増しして、持ち株比率が全体の3分の1(33.4%)を超えると、株主総会の特別決議を単独で否決する権限が発生する。この権限を行使すると、西松としては事業上必要な決議が行えなくなる可能性がある。
これを阻止したい西松は、村上氏グループに買い増ししないよう提案。村上氏グループもこれを受け入れ、5月下旬に誓約書を書いてきた。
ただし買い増し休止は期限付きだ。西松の第2四半期決算発表がある11月までの4カ月あまりが西松にとっての猶予となる。
今月29日に西松の株主総会が開催される。ターゲットとなった西松が動きだすとすればその後だ。西松は猶予の期間を使ってどんな方法で対抗していくのか。