(7)過度なストレスを抱えたまま、オーバーワークを続けている

 ぼくは48歳の時にパニック障害に襲われた。1年ほど不眠症が続き、発作性心房細動にも悩まされた。はっきりとした原因はわからない。

 ただ当時、「多くの病院が赤字の中で、自分が院長を務める病院は黒字経営」をしながら「日本中から注目されるような温かい医療を」という“綱渡り”のようなことをしていた。おそらくストレス過剰だったのではないかと思う。

 自分の限界を超えた過度のストレスはミッドライフ・クライシスをこじらせる危険因子となる。

(8)人生をうまく乗り切った人が初めて「つまずき」と向き合う

 8年ほど前、歌手の武田鉄矢さんと対談をした。彼も40代から20年間近く、鬱々とした時期があったという。彼の主演したドラマ『101回目のプロポーズ』が大ヒットした少し後のことだ。

 ここがミッドライフ・クライシスの難しいところで、人生が険しく、うまくいかなかった人だけがミッドライフ・クライシスに陥るわけではない。人生をうまく乗り切ってきた人達もこの人生の中間点で不穏な状態になる。

『アンナ・カレーニナ』や『戦争と平和』など世界に名が残る作品を書いたトルストイも10年ほど筆を断つ時期があった。文豪もミッドライフ・クライシスに陥るのだ。

人生が順風満帆な人でもなる可能性がある

 じつは、40~60代の80%がこのミッドライフ・クライシスに遭遇すると言われている。40~60代の80%がミッドライフ・クライシスを迎えるというのは、まさに人生が成功している人も人生に失敗し続けてきた人も、同じようにこの時期に危機を迎える可能性が強いということだ。

 ミッドライフ・クライシスは、誰でも襲われる。早い人では35歳からミッドライフ・クライシスに襲われることもある。

 近年、日本人の寿命が延びたことを考えると、70歳くらいまでをミッドライフ・クライシスの危険と隣り合わせの世代と考えたほうがいいだろう。