転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。ビジョナル創業者の南壮一郎氏は、ヤフーを傘下に持つZホールディングス社長の川邊健太郎氏とタッグを組み、合併事業会社「スタンバイ」を手掛けています。ヤフーが求人市場に興味を持つようになった背景には、南氏の絶え間ない働きかけがありました。(聞き手は蛯谷敏)
■インタビュー1回目▶「ビズリーチ創業のきっかけをつくった、ヤフー川邊健太郎社長のある勉強会」
――前回のインタビューで、川邊さんと南さんが知り合ったきっかけがプロ野球の縁だったと教えてもらいました。そんなお二人が、最近では一緒に事業をするようになっています。
川邊健太郎氏(以下、川邊):南さんや彼の仲間たちの高い能力をもってすれば、ビズリーチも成長するとは思っていました。けれど、おもしろいのは、南さんがビズリーチという一つの事業にこだわらず、次々と新しいことを仕掛けている点ですよね。
ビズリーチを立ち上げた後も、常に新しいビジネスの話をいつも仕入れてくれている。それが求人検索エンジンの話につながってくるんだけど。
ある時、「川邊さん、今度は特化型検索みたいなのが出てきた」と言うんですよ。
当時は確か、「メタサーチ」という言い方をしていたはずです。数多あるネット上の求人情報をクロールして、結果を表示していく検索サービスが出始めてきている、と。米インディードが大手で、海外では急成長しているという話を彼から聞かせてもらって。
それで、絶対に検索サービスを持っている会社がやるべきだという熱心な提案を受けました。その後、1年くらいは、うちの宮澤(弦・常務執行役員)と南さんが交渉して、最終的には「スタンバイ」を共同出資してつくることになったわけです。
――ヤフーは求人市場をどう見ているのですか?
川邊:市場は大きいし、人材の流動化は日本や社会のためにもなるので、力を入れるべきだと思っています。
ただ、ヤフーは、伝統的に日用的に利用するサービスに燃えるタイプなんです。検索サービスやEC(電子商取引)、決済サービスとか。一方で、人材は利用頻度が少ないので、これまではなかなか火が付きませんでした。
そんな重い腰の我々に、一生懸命、働き掛けてくれたのは、本当に南さんやスタンバイの人たちのおかげだと思っていますね。(談)
今回、紹介したエピソードのほか、ビジョナルの創業ノンフィクション『突き抜けるまで問い続けろ』では、起業の悩みから急拡大する組織の中で生まれる多様な課題(部門間の軋轢や離職者の急増、組織拡大の壁)を、ビズリーチ創業者たちがどう乗り越えてきたのかが、リアルに描かれています。