捨てられなくてスペースを奪っているモノ・ベスト4

――頂きモノは捨てにくいですよね。そういう、散らかっているおうちによくある、「あるあるの捨てられないモノ」を教えていただいてもいいですか?

石阪:よくあるのは、
・着物
・思い出の品
・子どもの作品
・頂きモノ

ですね。

私世代に多いのは、着物です。

着ていない着物を手放すための考え方とは?

――着物はどういう風に自問自答したら手放せるようになりますか?

石阪:もちろん、着ている着物は捨てなくていいですよ。私がお伝えしているのは、親から譲り受けて持て余している着物とか、親に結婚式の時に買ってもらったとか、着ていなくて生活を圧迫している着物のことです。

日々着て、楽しんでおられる方だったら逆に洋服を減らして着物を残せばいいと思います。最近は、着物ハンガーというモノもありますので、クローゼットにかけて収納もできます。でも、そうお伝えすると「着物は滅多に着ていません」という方が多いです。

とはいえ、売っても二束三文なので、売るのは躊躇されることが多いんですね。

ある生徒さんは、全く着ていない着物が入った大きな婚礼箪笥がマンションの一室を陣取っていました。その方には2人のお子さんがいらして上の中学生のお姉ちゃんには、お部屋があるのですが、もうすぐ小学生になる弟くんにはお部屋がありません。

そこで私は、この箪笥類を部屋から出すことができれば、弟君の、学習机も置ける子ども部屋が作れますよと、着物を手放した後の部屋のイメージを深めていただきました。

そのイメージを強く持てたことで、その方は着ていない着物のためのスペースなんて意味がない空間だと気付かれて、二束三文でも着物を売って箪笥を手放すという気持ちに変わっていかれました。

――着物を最終的に手放せた方の心境としては、泣く泣くなのか、それともスッキリされているのか、どっちなんですか?

石阪:もちろんスッキリです。モノがあることで、本当にしたい理想の暮らしができなかったことに気づけたからです。部屋が完成して弟くんの嬉しそうな様子に本当に着物を手放して良かったと実感されました。

片づけ前には、一番自分が手放し難いと思うモノが頭をよぎるので、片づける気力が奪われるのです。着物とか思い出の品とか、「あれを捨てたらスッキリするけど、でも捨てられないんだよな」という、頭の片隅にずっとあるモノから手をつけようとすると片づけは進みません。

ですからそういったモノは、最後の最後にやるのが正解なんですよ。

片づけが進むうちに、モノを持つということはモノをしまう場所が必要だということがわかるようになっていきます。これを処分したら、本当に必要なアレをここに綺麗に収納できるなぁと思えるように変わっていくんです。

なので、自分にとって手放すハードルの高いモノは最後に向き合うのがおすすめの方法です。

存在を忘れていたモノを、思い出の品とは呼べない

――なるほど。では、思い出の品についてはどうですか?

石阪:思い出の品っていうのは、今の時代、例えば紙類や写真はデータにできるので、データに残せるモノはデータ化したらいいですね。

モノで持っておきたいのであれば、自分がそれを持っていることですごく幸せな気持ちになれるなら、自分が持てる枠の中で保管されたら良いと思いますよ。

思い出の品が捨てられないってよく言われますが、どうしてその思い出品を持っていたいのかを深く向き合ってみると判断の材料がみえてきます。

例えば、ある生徒さんのおうちに、修学旅行に行った時に買ったという数々のキーホルダーが入った箱がありました。けれど、「このキーホルダーはどうして持っていたいの?」とお聞きすると、「なんとなく思い出ボックスに入れてました。そう言われると別に要らないなあ。それよりアクセサリーをちゃんと収納したいわ」とおっしゃって捨てられたんです。

なぜモノとして持っていたいのか?と考えると手放すこともあるでしょうし、綺麗にお手入れしながら大切に保管するという方法を選ばれることもあります。

要は、持てるモノの枠は、決まっていますから、大切なモノを心地よい空間の中で持つために、優先順位を決めるのが片づけるということなのです。

子どもの作品は子どもの抜け殻! 拾い集めるのは親のエゴ

――子どもの作品についてはどうですか?

石阪:子どもさんが成人している場合は、譲り渡そうとすると大半は、「いらない」と言われんですよ。「もういいから捨てて」と。子どもの作品は親の子育ての証のようなもので、手放せないのは、子どもではなく親ということが多いですね。

お気持ちはわかるのですが、ダンボールいっぱいのお子さんの初めて描いた絵とか作品などは、場所をとりますし、お子さんからしても、本当は捨てて欲しいのに譲られてしまい、親の思いが重くて捨てられず、困ることになるかもしれないですよね。

ですので、私の場合は、B5サイズくらいの箱を用意していて、そこに入れられる程度にしています。「棺桶ボックス」と呼んでいて、私が死んだ時はこれを棺に入れてねと伝えています。

子どもさんが小さい場合は、絵であれば、まずは額に入れて飾ってあげる。飾ってあげて「頑張ったね!」と称えてあげる。それからフォトブックにして、作品自体はそれとなく捨てる。わざわざ子どもに「捨てるわよ!」など言わずに、知らない間にフェードアウトしてあげればいいと思います。

子どもは、成長する過程でたくさんの抜け殻を残してどんどん進化していきます。蝶になって羽ばたいていきます。だから、その抜け殻をお母さんが一生懸命拾って集めて、家の中を狭くするよりは、今の子どもさんが羽ばたけるスペースを作ってあげたほうが子どもが巣立っていくまでに楽しいことがたくさんできますね。

――子どもの作品=抜け殻というのは面白いですね。

石阪:子どもは全く執着がないんですよ。大人になってから、「あなたの作品」って送られてくると迷惑でしかないと言う人はとても多いですよ。

自分の身に置いてみると実感できたりしませんか?

いったいどこまで捨てれば<br />家は片づくのか【before】子どもの作品や洋服、おもちゃなどがあふれ返った子ども部屋。机の上もモノが積み重なっているため、勉強もままならない。
いったいどこまで捨てれば<br />家は片づくのか【after】見違えるように明るくて開放的な空間に! モノを厳選したおかげで、今現在の子どもたちに必要な環境を作り出すことができた。