中国でのウイグル人への人権侵害は、強制労働や不妊手術の強制など実に悲惨なものであり、米国のブリンケン国務長官が「ジェノサイド」(特定の民族の集団的殺害)だと批判しています。昨年、日本企業14社がウイグル人の強制労働に何らかの形で関与しているとの調査結果が判明しましたが、彼らの回答や対策は不十分であり、落胆しています。(日本ウイグル協会副会長 レテプ・アフメット)
在日ウイグル人が帰国後に死亡の報道も
G7で日本だけが対中国制裁をしていない
中国・新疆ウイグル自治区におけるウイグル人への人権侵害は、特に2017年以降、極端なレベルにまで悪化しました。国際社会からの中国政府への非難は強まる一方です。
ウイグル人を無差別に収容し、強制労働を強いる。女性に不妊手術を強制し、子供を親から強制的に引き離す――。各国の専門家の調査により明らかになったその実態は、現代のこととは思えないほど深刻なものです。私たち日本在住のウイグル人も、家族との連絡が取れず、故郷に帰ることもできない状態が続いています。
突然、連絡が途絶えた親の安否が気になり、危険を冒して一時帰国した在日ウイグル人女性が安否不明となり、米政府系ラジオ局は、彼女が治安当局による捜査の最中に死亡したと報じました。
4年間放置されてきたウイグルの危機的な状況は、今年に入って新たな局面を迎えました。欧米を中心とした人権団体や政府、議会は、数年間に及ぶ懸命な情報収集と分析、そして事実の確認と国際法との照合などを経て、これらを国際法上犯罪となるジェノサイドと認定し、責任を負わせる取り組みを始めたのです。
今年に入ってから、米国政府、カナダ議会、オランダ議会、イギリス議会、リトアニア議会、チェコ議会、ベルギー議会、ドイツ議会人権委員会などが相次いで、ジェノサイドや人道に対する罪だと認定しました。
米国のブリンケン国務長官は今年1月の就任直後の記者会見で、「ウイグル人に対してジェノサイドが行われたという認識は変わっていない」と明言しています。
ニュージーランド議会やイタリア議会も、非難決議を採択しています。欧州ではまだいくつもの議会で、同様の動きがあると報道されています。また、先進7カ国(G7)の中では、日本を除く各国がウイグル問題で制裁に踏み切りました。
政界だけではなく、世界的に知られる人権団体、国際法の専門家、シンクタンクなども相次いで独自の調査報告書を発表し、国際社会に対して行動を促しています。
国連は、明らかになった多くの証拠を前にしても、実効性の薄い声明を繰り返す以上の行動を取らず、沈黙しています。各国の議会や民間団体は国連に先立って行動を起こし、対策を迫る画期的な取り組みといえるでしょう。
そんな中、日本の国会は非難決議すら発せず、事実上、ウイグルでの悲惨な状況を黙認し続けており、私たち日本在住のウイグル人は、大変落胆しています。
それだけではありません。日本の民間企業もまた、直接または間接的に、ウイグル人の強制労働に加担している可能性が、昨年明らかになりました。