混雑率の調査結果は
あくまで参考値

 それを裏付けるのが、コロナ禍という未曽有の事態を受けて、混雑率調査に合わせて追加で行われた調査の結果である。自動改札機の通過データを基に、一昨年の6月第1週の朝ラッシュ混雑時間帯ピーク1時間の利用状況を100として、今年6月1日から4日までの全国主要駅における利用者数を指数で示している。

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 これによると、JR東日本の新宿駅が61、京王新宿駅、小田急新宿駅がともに61と減少幅が一致しているが、混雑率調査に基づく混雑時間帯ピーク1時間の乗客数(厳密には最混雑区間の利用者であり利用区間は一致しないが、傾向は同じものとみなして計算する)を同じく指数で示すと、JR中央快速線が63、京王本線が67、小田急小田原線が76と差がついている。

 また東京メトロ丸ノ内線池袋駅が65、有楽町線池袋駅が70、副都心線池袋駅が62に対し、東武東上線池袋駅は62、西武池袋線池袋駅は66となり、こちらも傾向は一致している。ところが乗客数で見ると、丸ノ内線が64、有楽町線が67、副都心線が61でほとんど一致しているのに対し、東武東上線は69、西武池袋線は72で、事業者間では差がついている。

 この他、東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅が55に対して都営浅草線日本橋駅は56だが、乗客数で見ると、銀座線・東西線の合計が62に対して都営浅草線は77と大きな差がついている。今回の混雑率調査では、同じ地下鉄でも東京メトロの9路線は混雑率の減少幅が大きく、都営地下鉄の4路線は混雑率の減少幅が小さかったが、自動改札機の通過データから見る限りでは、そこまで大きな差が開いたとは考えにくい。

 2020年度混雑率調査からいえることは、通勤環境がコロナ禍によって激変したということ止まりだ。個別の数字はあくまで参考値として見た方がよいだろう。