某大手金融機関に勤めていた著者は、40歳で早期リタイアを考え始め、2019年に資産1億円を達成。51歳で早期リタイアを実現した。初の著書『【エル式】 米国株投資で1億円』では、FIRE(経済的自立と早期退職)の原動力となった米国株投資術を全公開。基礎の基礎から、年代・目的別の投資指南、最強の投資先10銘柄に至るまで、“初心者以上マニア未満”の全個人投資家に即役立つ米国株投資を徹底指南する。
会計上でも誤魔化しにくい指標
いざというときに頼りになるのはキャッシュ(現金)をどれだけ持っているかです。
それは個人でも企業でも変わりはないでしょう。
キャッシュを安定的に稼ぎ出す仕組みがあれば、ライバル企業に打ち勝って高い競争力がキープできるようになります。
そのキャッシュを再投資すれば、より多くのキャッシュを生めるようになります。
加えて、コロナショックのような危機にも、余裕を持って対処できます。
そして、連続増配の原資にもなります。
自由に使えるキャッシュをどのくらい効率的に稼いでいるかを示しているのが、「営業キャッシュフロー・マージン」です。
次の式で計算します。
このうち「営業キャッシュフロー」は、キャッシュフロー計算書で確認できます。
売上高は、損益計算書で確認できます。
売上高は理解しやすい指標ですが、「営業キャッシュフロー」というのは耳慣れない言葉でしょう。
キャッシュフローとは、1会計年度に出入りしたキャッシュの流れを示しています。
それには「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つがあります。
このうち、もっとも大切なのは営業キャッシュフロー。本業の営業でいくらキャッシュを稼いだかを示しています。
投資キャッシュフローは資産の取得や売却で増減したキャッシュ、財務キャッシュフローは資金の調達や返済によって増減したキャッシュを意味しています。
営業キャッシュフローが重要なのは、会計上でも誤魔化しにくい指標だからです。売上や利益は誤魔化す(粉飾する)余地もありますが、営業キャッシュフローは透明性が高いので、粉飾しにくい指標。それだけ信頼できるのです。
営業キャッシュフローには、営業段階でキャッシュが入るため、確実性が高いという特徴もあります。
契約段階でも売り上げは立ちますが(つまり売上高として換算できますが)、実際にキャッシュが入るのは先になります。
キャッシュとしていちばん当てにできるのが、営業キャッシュフローなのです。
エル流の米国株投資では、営業キャッシュフロー・マージンが20%以上であることが条件の1つです。
仮に1000億円の売上高がある場合、200億円以上の営業キャッシュフローが残るということです。
営業キャッシュフロー・マージンは、銘柄ごとにネット検索などで調べることができます。
多くの日本企業の営業キャッシュフロー・マージンは8%もあればいいほうですが、アメリカのメジャーな銘柄はキャッシュを稼ぐパワーがあり、強い競争力につながっています。
たとえば、アメリカ経済を引っ張るITセクターの営業キャッシュフロー・マージンの平均値は27%ほどもあり、マイクロソフト(MSFT)は30%、アップル(AAPL)は29%、ビザ(V)は53%などとなっています。