「不安」でならないからこそ、
積極的にアプローチし続ける

 もうひとつ、よくやっていたことがあります。

 カフェなどでお客様との面会をしていると、隣の席で同業者が営業しているシーンに出くわすことがあります。どうしたって、“耳がダンボ”になります。そして、聞き耳を立てていると、なかには、お客様にとって不利な保険を無理矢理売り込んでいることに気づくこともあります。

 そんなときは、どうにも我慢ができません。不審がられるのを承知のうえで、商談が終わって、営業マンが先に帰ったときなどに、「失礼します」と名刺を渡しながら、その保険に入ってはいけない理由を丁寧にご説明し、「何かございましたら、ご連絡ください」とお声がけをしました。

 まぁ、こういう感じで、「名刺」を配りまくっても、そこから仕事につながることはほとんどありません。契約をお預かりできるケースの大半は、お客様からの紹介からつながっていくことに変わりはないのです。

 だけど、僕は、こうやって少しでも可能性を拓くために、積極的にアプローチしていくことには意味があると信じてやり続けました。もしかしたら、深層心理では、不安で不安でならないから、少しでも可能性のあることにすがりついていたのかもしれませんが、それでもいいからやり続けようと思っていました。

 実際、こんなことがありました。

 大手広告代理店の社屋の2階のカフェで商談が終わり、設計書などの資料を後片付けしていたときのことです。

 ちょうど隣りのテーブルで、おそらく大手広告代理店の役員と思われる方と税理士が打ち合わせをしていました。例によって“聞き耳”を立てていると、「そろそろ〇〇さんも相続対策として生命保険を検討されたらいかがですか?」と税理士がお話しているのが聞こえてきました。

「名刺を出してもイヤがられるだけかな……」などと雑念が湧きますが、名刺を渡すのと渡さないのと、どちらがチャンスが広がるのかの二者択一です。だから、僕は「名刺」を差し出してご挨拶をしました。当然のごとく、そのおふたりはあからさまに迷惑そうな顔をして、僕を追い払うような素振りを見せたので、「何かお困りのことがあったら、いつでもご連絡ください」と笑顔で語りかけて、すぐに引き下がりました。

 そして、カフェを出て、街を歩いていたときです。

 携帯電話が鳴ったので出ると、電話の主は先日、保険の契約をお預かりしたお客様からでした。しかも、「金沢さんに会って欲しい人がいます。開業医をしていて……」とおっしゃるのです。これは、飛び上がりたくなるほど嬉しかった。そして、僕は、瞬時にこう思ったのです。

 さっき、「名刺」をお渡ししたからだ、と。神様は必死で頑張っている人間を見てくださっているんだ。だから、こうやってご褒美をいただけたんだ……。僕は、宗教には一切かかわりがありません。だけど、自然とそう思えたし、そう信じることに意味があると思いました。

 理由なんてなくていい。0.00001%でも可能性があれば、一生懸命に行動する。そんな努力をコツコツと続けていれば、なんらかの形で「いいこと」が訪れる。そう信じることができれば、どんなにうまくいかない時だって、不安に飲み込まれるようなことなく、常に平常心を保ち、前を向いて生きていけると思うからです。そのためには、0.00001%でも可能性があれば、図々しくても一歩を踏み出すことを習慣にしていたのです。

 そもそも、自分が信じる商品の営業をするのは悪いことではありません。

 僕が営業していた保険は「形」のない商品です。だから、ほとんどの人があまりよくわかっていません。そんな商品について正しい知識や情報をお伝えすることが悪いことであるはずがありません。であれば、何も臆することはないではありませんか。堂々としていればいいんです。

 図々しくても、一歩前に進み出る。そして、一人でも多くのお客様に、自分が信じる商品をお伝えしようとする。その努力を続けていれば、必ず、営業マンにはチャンスが訪れるのだと思うのです(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。