危険をもたらす相手に対して闘いを挑むか、それとも、その相手から逃げ去ってしまうか。自分の身を守って生き残っていくために、どちらかの行動が選ばれます。

オスネコ同士のケンカなどを見ていても、最初のうちはお互いに怒りをむき出しにして威嚇し合っています。そのうちに火ぶたが切られ激しい闘いが始まることもありますが、一方が一目散に逃げ去っていくこともあります。動物たちのそうした行動は「闘争か逃走か」の典型であり、怒りという感情のもともとの姿がよく表れているのではないでしょうか。

もし怒りという警報ブザーがちゃんと働かなかったらどうなるか? 野生動物ならあっという間に他の獣の餌食になってしまうし、人間だって闘いも逃げもせずまったく怒らずにいたら、より強い人間の“餌食”になってしまうかもしれません。怒らない人は、強い立場の人間の言いなりになりやすいのですが、組織や社会の中でそういう人から嫌な目に遭わされたり、いいようにこき使われたりしたらたまりませんよね。

ですから、人間にとっても、怒りは生きていくうえで欠かせない感情なのです。この世の中でより確実に生き残っていくために、もともとわたしたちに組み込まれている生存本能だと言ってもいいでしょう。

そして、このような本来的な部分に立ち返れば、「怒りの感情を顔や言葉で表すことを別にそんなにマイナスに捉えなくてもいい」ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

だから、無理に抑えたり避けたりすることはありません。

むしろわたしたちは、「自分が生き残っていくために必要なことなんだから、怒るべきときは胸を張ってちゃんと怒ろう」というくらいに考えていくほうがいいのではないでしょうか。

怒りを無理に我慢すると寿命に影響する

じつは、怒りを無理に抑え込んでしまうと、体に悪影響があります。

怒りの感情が湧くことによって、具体的に体にどんな変化が起こるかというと、次のようなことが挙げられます。

〇血圧が上がる。
〇心拍数が上がる。
⃝手のひらにじっとりとした脂汗をかく。
⃝聴覚が高まり、物音がよく聞こえるようになる。
⃝視覚が高まり、遠くまで見えるようになる。

つまり、血管、脳、心臓などに急激な影響を与えることになるわけです。