地理とは「地球上の理(ことわり)」である。この指針で現代世界の疑問を解き明かし、6万部を突破した『経済は地理から学べ!』。著者は、代々木ゼミナールで「東大地理」を教える実力派、宮路秀作氏だ。日本地理学会企画専門委員会の委員として、大学教員を中心に創設された「地理学のアウトリーチ研究グループ」にも参加し、精力的に活動している。2022年から高等学校教育で「地理総合」が必修科目となることが決定し、地理にスポットライトが当たっている。本連載は、ビジネスパーソンが地理を学ぶべき理由に切り込んだものである。

服のタグに「PRC」、それは中国製品ですPhoto: Adobe Stock

中国経済と衣類

 先進国の輸出統計にはある特徴があります。「1位機械類、2位自動車」となっている国が多いのです(アメリカ、ドイツ、日本、イギリス、イタリア、メキシコなど)。

 そんな中、中国の輸出統計は「1位機械類、2位衣類」です。衣類というのは、イタリアが輸出するようなブランド品ではありません。比較的安価で手に入る衣類ですね。

 衣類というのは、いわゆる労働集約型産業の1つで、多くの労働力を必要とします。そのため、安価な賃金水準を求める傾向にあります。「安価な労働力」指向型産業ですね。さらに中国は、綿花の生産が世界最大ですので、原材料の現地調達が可能です。

「人がいる! 原材料(綿花)がある!」

 これが、中国の綿糸の生産量が世界最大である背景です。

 さらに、世界的な生産拠点となっていることから、国内で生産する綿花だけでは追いつかず、世界最大の綿花生産国であるにもかかわらず、世界有数の綿花輸入国となっているのです。

 そういえば、この原稿を書きながら自分が着ている服のタグを見てみましたが、「made in PRC」と書かれていました。PRCとは、People's Republic of Chinaの略です。最近は「made in China」と書かないこともあるようです。

(本原稿は、宮路秀作著『経済は地理から学べ!』を抜粋したものです)