「あなたの役に立ちにきました」と堂々と言えるか

高橋 もうひとつ、売り手と買い手の「ズレ」を解消するために必要なのが「質問」だと思います。当たり前のことですが、お客さまにちゃんと「質問」することが非常に大切です

金沢 「質問」は大切ですね。営業マンにとってとても重要な行動です。それだけに、上手な人と下手な人の差が大きく出る。そもそも、ビビってしまって、するべき質問ができない営業マンもたくさんいますしね。

高橋 そうなんですよね。「こんなことまで聞いちゃいけないんじゃないか」「失礼なんじゃないか」と余計なことを考えて、質問できない人が多い。本当にお客さまの役に立とうと考えたうえでの質問ならば、たとえ深く聞きすぎてしまったとしても、お客さまは怒らないはずなのに……。

金沢 よくわかります。保険営業ではとくに、お客さまからいろいろなセンシティブ情報をお聞きします。むしろいろいろなセンシティブ情報を教えていただかないと、お客さまに最善の解決策を提示できませんからね。

 にもかかわらず、遠慮して聞けない人がいるんですよ。人として、奥ゆかしくありたい気持ちはわかります。ただ、営業マンとして本当にお客さまのことを考えているのなら、踏み込んで聞いたほうがいい。

 もちろん「聞き方」は大事です。矢継ぎ早に詰問したり、単なる興味本位で聞いたりしていてはいけません。遠慮はすべきではありませんが、当然、配慮は必要です。

高橋 本当ですね。若手の営業マンに「最低限、これらの項目は聞き出してきなさい」とリストを渡したら、どうも商談でそのリストの上から順番に淡々と質問していったようで、「お客さまが不機嫌になったじゃないですか!」と逆に怒られたことがあります。

「質問の順番は、状況に応じて自分で考えなさい」と伝えなかった私の落ち度でもあるのですが……。できる営業マンはそのあたり、自分で質問の順番を考えて、臨機応変に軌道修正できるものですよね。同じことを聞くのでも、「聞き方」で大きな差が出ます。

超一流の営業マンが、「結果は“出す”ものではなく、“出る”ものである」と考える理由高橋浩一さん

金沢 大前提として、自分の扱っている商品やサービスが必ずお客さまにとってプラスになるものなのであれば、堂々としていればいいと思うんですよね。堂々と提案し、堂々と質問すればいい。だってそれが相手にとって役に立つことなんだから。このマインドセットが大切だと思います。その上で「聞き方」に配慮すれば、何も恐れることはない。

 後ろめたく感じてオドオドしたり、ビビって大事なことを聞き出せないのは、自分の中でどこかに「なんとかうまく契約にこぎ着けるためにお客さまの前に立っている」という意識があるからだと思うんです。「あなたの役に立ちにきました」と堂々と言えるか。シンプルですが、重要なポイントです。

高橋 「目の前の契約がほしいから」という理由でする質問と、「お客さまの課題を解決しよう」と考えてする質問の違いは、営業マンが思っている以上にお客さまは感じ取っているものです。

「この人は目の前の契約がほしいだけなんだ」とお客さまに感じさせてしまったら、センシティブな質問には答えたくなくなるかもしれません。でも「この人は自分のためを思って聞いてくれているんだ」とお客さまに感じてもらえれば、ちょっとやそっとのことでは関係は崩れない。

 それどころか、他の営業マンが教えてもらえないような話を深く聞いた上で営業できるわけですから、圧倒的に有利になります。結局のところ金沢さんのおっしゃるように、「『あなたの役に立ちにきました』と堂々と言えるか」に尽きるんですよね。

金沢 そうですね。加えて、「最終的に契約するかどうかを決めるのはお客さまである」という当たり前の事実を忘れないこと。「絶対に契約してもらわなければならない」という思考に縛られると、やっぱりやることなすことがズレ始めてしまうんです。(つづく)