ビジネスモデルイノベーションで
競走優位に立つ
ラモン・カサデサス=マサネル教授
(ハーバード・ビジネス・スクール)

 多くの企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に挑戦し、苦労しています。当初意図していたような結果がもたらされていない原因についての一つの仮説は、BMI(ビジネスモデル・イノベーション)一般に言える、諸活動のコーディネーション問題が生じている可能性です。

 デジタル化した時にうまく機能するような諸活動の調整のあり方は、それ以前のノンデジタルの時のそれとはかなり異なっているのかも知れません。両方の世界でうまく機能させるというのは簡単ではないでしょう。

 ただし企業が、傘下にある異なるビジネスモデルを共存させることは可能です。

 私がBMIに関連して、日本の経営者にお伝えしたいことは次の4点です。

 第1に、「進んで実験せよ」ということです。特に実験が安価に行え、何がうまく行き何がうまく行かないかを判断する上での参考になるような状況においてはです。

 第2に、「不確実性を歓迎し、リスクを取れ」と申し上げたい。

 第3には、「失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまく行かなかった人々に汚名を着せるな」が挙げられます。

 そして最後に、「異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなし得る、視野を広げる貢献を過小評価するな」ということを指摘したいと思います。

 多様性や相違を受容することは、単に社会的責任であるばかりではなく、自社の競争優位性を高めるイノベーション重視の企業文化を育むことになります。