私たちの生活には、いろいろなところで神様の存在を感じられることがあります。身近なところでは、「初詣」。受験生なら「合格祈願」。ビジネスパーソンなら「商売繁盛」。名だたる経営者も、日本の歴史をつくった戦国大名や歴代天皇も、神様を信仰し、力を借りて成功を収めてきました。漫画やゲームのキャラクター名でつかわれていることもあります。もしかしたら、ヒットの要因は、神様のご利益かもしれませんね。
日本には、八百万(やおよろず)の神様がいると言われています。膨大な神様の中から100項目にわたって紹介する新刊『最強の神様100』には、古代から現代まで、めちゃくちゃ力のある神様が登場します。最強クラスの神様なので、ご利益も多種多様。
今回は、「お稲荷さんは、なぜ怖がられるのか?」についての書き下ろしになります。
お米の神から変化したお稲荷さん
神社の本を出してから、よく質問される事があります。
「わたし、お稲荷さん、苦手なのですが……」
食べるお稲荷さんじゃありません。「稲荷神社の神様」のことです。
何となくそのお気持ち、感覚はわかります。怖い逸話が、まことしやかに語られることもありますし……。もちろん気にならない人、お稲荷さんが大好きな方もたくさんいます。
そもそも、お稲荷さんとは、どういう神様でしょうか?
ずばり、「お米の神様」です。稲荷の“稲”の神様ですね。
ご神名はウカノミタマ。『古事記』では宇迦之御魂神、『日本書紀』では倉稲魂命と表記します。
伊勢神宮では主祭神アマテラス(天照大御神)にささげるお米をつくる水田がありますが、その水田の神様がウカノミタマです。
稲の神様と聞いて、怖いと思う人はいますか? 日本に住む人の多くが主食にしている、あの「米(こめ)」の神様です。
なぜ、お米の神様が苦手と感じる人が、少なからずいるのでしょうか。
それは「お米の神から、お金の神に変化したから」です。
古代より、お米は現代におけるお金の役割を果たしていました。戦国時代や江戸時代、武士のお給料は「◯万石」のようにお米で表され、平安時代より国民は税金として年貢米を徴収されていました。江戸時代まで「お米」は「消費期限付き通貨」だったのです。
同時に、商人の台頭により「お金そのもの」の重要性が高まります。経済の血液が、消費期限付き通貨である「お米」から、消費期限のない通貨である「お金」に徐々にシフトしたわけですね。
その経済的シフトに伴って、お米の神様だったお稲荷さんは、いつの間にかお金の神様に変化します。江戸時代、お稲荷さんは商人を中心に広く信仰されました。「お米を腹いっぱい食べたい」という人々のお稲荷さんへの願いも、「お金をたくさん欲しい」という願いに変わりました。
神様に対する人々の願いの質が変われば、神社の感じも変わります。
つまり、お稲荷さんを苦手に感じたり、怖く感じたりするのは、お金に対する人々(含む自分自身)の願いを、苦手に感じたり、怖く感じたりするからだと思い至りました。人はお金に執着するもの。その執着の思いが稲荷神社に残っていると、苦手に感じる方もいるわけですね。
逆に言えば、苦手と敬遠せず、うまく折り合っていくと、お金との付き合い方も良いように変化するでしょう。お稲荷さんに苦手意識のある人は、ただ無心に「祓いたまえ、清めたまえ」と祈るだけにして、何かを感じようとせず、さっと立ち去ってはいかがでしょうか。だんだん慣れてきます。
お稲荷さん参拝後に後味が悪く感じるならば、その後さらに、ご自身の好きな神社や緑豊かな丘や公園で過ごせばスッキリします。
もちろん、お稲荷さんがお好きな方は、じっくり参拝し、願いを具体的にお伝えするとよいですね。稲荷は「意が成る」とも言います。ご自身の「意志」をぜひお稲荷さんに宣言してください。
もう一度申し上げますが、神様に対する人々の願いの質が変われば、神社の感じも変わります。お金に対する感じ方も変化するでしょう。
神様をどう感じるかは、われわれの心持ち・心掛け次第ということですね。
*本原稿は、『最強の神様100』の著者・八木龍平氏による書き下ろしです。
八木龍平(やぎ・りゅうへい)
1975年、京都市生まれ。博士(知識科学)
スピリチュアルな感覚を活用する社会心理学者
科学とスピリチュアルを組み合わせた今までにない「神社分析」が好評を博し、『成功している人は、なぜ神社に行くのか?』(サンマーク出版)はまたたくまに27万部超のベストセラーに。
NTTコムウェアのシステムエンジニア、富士通研究所シニアリサーチャー、北陸先端科学技術大学院大学・客員准教授、青山学院大学・非常勤講師などを歴任。性格分析やコミュニケーションの学術論文を出版する社会心理学者である。2006年度コンピュータ利用教育学会(CIEC)学会賞・論文賞。
現在は武蔵野学院大学・兼任講師として「情報リテラシー」を教えるかたわら、ブログや神社ツアーで「リュウ博士」と呼ばれ活躍中。全国の企業・団体での講演や、神社ツアーには、毎回多くの参加者が集まり、人気を博している。
著者からのメッセージ
「神は人の敬によりて威を増し、人は神の徳によりて運を添ふ」
鎌倉時代に制定された「御成敗式目」の第一条に記された言葉です。意味は、神様は人間の敬う心によってそのお力を増し、人間は神様の徳をいただいて運を開く。この神様の徳こそ、ご利益です。
御成敗式目は、鎌倉幕府の第3代執権・北条泰時が中心になってまとめた日本初の武家政権による法令です。武士にも一般庶民にも大きく影響を与えたこの法令は、神様と人との関係を説くことから始まるわけですね。
神様と人との関係は一方通行ではありません。お互いを助け合い高め合う存在。神様のお力をいただく「開運」は、このお互い様の関係の中で起こることを、読者の皆様にご理解いただければ、本書を出版した甲斐があります。
神様のやりたいことを助ける人は、神様から多くのプレゼントを受け取るでしょう。
本書を、神様との「良き隣人関係」を結ぶ一助としてくだされば幸いです。
本書の見方
古代から現代まで、めちゃくちゃ力のある神様が登場しますが、最強クラスの神様たちなので、ご利益も多種多様。あなたにピッタリな神様を見つけていただくためにも、本書の見方を紹介いたします。
■ナンバリング
本書では、何度も登場する神様がいます。本を活用する機会が多いはずなので、各項目初出のみ、数字を入れています。
■神様の特徴
同じご利益でも、性格が違います。神様の個性を表したご利益となります。
■神様を祭る寺社
神様を祭る代表的な神社・お寺を紹介。P271には、ご参拝におすすめの神社をピックアップしています。
■神様のご利益
神様が最も得意とするご利益を全21項目から主な3つを紹介。P255にはご利益別索引があるので、自身が欲するご利益ごとに神様を探せます。
■こんな人にオススメ!
人によって、職業も年齢もバラバラ。よりイメージしやすいように、あなたと神様とのマッチングをお手伝いします。
新刊書籍のご案内
『最強の神様100』
八木龍平著、定価1650円(本体1500円+税)、ダイヤモンド社
第1章では、日本の国が始まった最初の最初、弥生時代から古墳・飛鳥時代に大きな力を発揮した神々をご紹介します。日本で一番古い神社の神様など、神々の最長老ぞろいの第1章はご利益のスケールも大きく、「人として成長したい方」に特におすすめです。
第2章では、怨霊が不幸をもたらすと人々が本気で恐れた奈良時代から平安時代に、大きな力を発揮した神々をご紹介します。鬼から守る神様、今年の福徳をもたらす神様など、長く繁栄した神々ぞろいの第2章は、「不幸体質から幸運体質になりたい方」に特におすすめです。
第3章では、大きな戦乱が起こった鎌倉時代から戦国時代に、大きな力を発揮した神々をご紹介します。戦わない勝利の神様、宇宙根源の究極神など、人々が最も力を欲した時代にふさわしい神々の強者ぞろいの第3章は、「強力なパワーが欲しい方」に特におすすめです。
第4章では、安土桃山時代から江戸時代に大きな力を発揮した神々をご紹介します。「あとひと押し」をくれる神様、思いがけない知恵をもたらす神様など、新時代を切り開いた神々ぞろいの第4章は、「新しい流れを呼び込みたい方」に特におすすめです。
明治時代から昭和初期に大きな力を発揮したカリスマな神々ぞろいの第5章は、その道を究める神様など、「魅力を磨きたい方」におすすめの神様をご紹介。現代に大きな力を発揮している龍神さんや犬神さんなど、人間の要望に積極対応する神々ぞろいの第6章は、「大舞台で力を発揮したい方」におすすめの神様をご紹介します。
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