さらに今後、代替肉市場をさらに成長させる追い風のひとつが、米国の「Z世代」という存在だ。1990年代後半から2010年ごろにかけて生まれた世代のことで、ネットリテラシーが高く、環境問題に強い関心があるとされる。

 こうした次代を担う若者たちは、畜産による環境負荷などの情報から、「従来の肉よりも、植物性の代替肉のほうがクール」という考えを持ちやすいという。このため、Z世代が社会の中心になっていくにつれて、代替肉の市場もさらに拡大していくという見方がある。市場の拡大に伴って、ビヨンドミートは2019年にナスダックに上場。インポッシブルフーズも2022年4月までに上場を申請する方針を立てている。

世界に先駆けて代替肉を開発した日本のメーカーとは

 植物由来の代替肉製造といえば、米国を中心にここ10年ほどで急成長してきたスタートアップ企業が有名だが、じつは日本に半世紀以上も前から、さまざまな代替肉を生み出してきた企業がある。大阪府泉佐野市で1950年に創業した不二製油だ。

 不二製油は植物性油脂の大手で、業務用チョコレート市場では国内トップ、世界でも3位のシェアを誇る。主力商品の油脂と並んで、不二製油が力を入れてきたのが、大豆を使った代替肉「大豆ミート」だ。

 1957年には早くも最初の商品を開発。以来、大豆ミートの素材になる粒状大豆たんぱくなどを開発してきた。1969年には肉に近い食感を目指し、肉状組織たんぱく質製品「フジニック」を世に出した。まさに現在、スタートアップ企業の間で激しい開発競争が繰り広げられている分野だ。

 けれども、不二製油の大豆ミート関連商品は会社の柱にはならなかった。肉の代替商品なので値段は肉よりも安く、しかも当時は代替肉の市場そのものがない。このため、大豆ミート部門は常に赤字だったそうだ。