三井住友 名門「財閥」の野望#8Photo:DuKai photographer/gettyimages

旧住友銀行に並ぶモーレツ社風のイメージが色濃い住友不動産。8年ぶりに三井不動産を最終利益で逆転したが、それはモーレツ営業のおかげでもなかった。特集『三井住友 名門「財閥」の野望』(全18回)の#8では、財閥系不動産会社として並び称される三井不動産と住友不動産の違いを整理しながら、住友不動産躍進の要因を探った。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

業界盟主の三井不動産に
追いついた住友不動産

「三井不動産とうちでは、ロケットの発射台が違う」。こう語るのは住友不動産幹部だ。

 三井不動産は1941年、三井合名会社から不動産部門を分離し、三井11家の出資で設立。三井家の家祖、三井高利が「越後屋」を開業した東京・日本橋を本拠地に、不動産会社として歩み始めた。

 一方の住友不動産の設立は49年。三井不動産と同じく住友本社の不動産部門を継承し、泉不動産の社名で設立された。しかし、住友本社の資産は大半が住友銀行と住友商事に引き継がれたため、泉不動産が引き継いだ不動産はわずかに3件。しかもそれらは京都や神戸で、東京の一等地である日本橋を拠点とする三井不動産とは大きな差があった。

 優良な不動産を多く引き継いだ三井不動産や三菱地所が、それこそロケットのごとく高度経済成長期に拡大していった状況を、住友不動産は常に後ろから追い掛けていたというわけだ。

 そんなハンディを考えれば、2021年3月期に最終利益で三井不動産を逆転し業界首位に立ったことは、住友不動産関係者にとって大きな喜びだったはずだ。

 長らく首位を走ってきた三井不動産は21年3月期、最終利益が前期比29.6%減の1295億円に沈んだ一方、住友不動産は同0.3%増の1413億円をたたき出し、13年3月期以来、8年ぶりに首位に立ったのだ。

 先を行く三井不動産、追い掛ける住友不動産――。

 財閥系不動産会社としてひとくくりに見られる両社だが、歴史をひもとくと、常にこの構図の中で、切磋琢磨してきた姿が浮かんでくる。中でも、三井不動産の江戸英雄氏と住友不動産の安藤太郎氏を抜きには語れない。