ゼロベースで全体構想を描くことが重要

アーキテクト思考を用いて、行政のDXを成功に導くPhoto: Adobe Stock

 マイナンバーのベースになっているのは住民基本台帳で、氏名・生年月日・性別・住所など住民票に含まれている情報しか保有していません。世帯構造や家族形態などは把握できず、すべての行政サービスで幅広く使用するには不十分です。

 また、地方自治体ごとにバラバラに開発されてきた住基ネットには様々なITベンダーが関与しているため、簡単には統合ができません。全体構想がないままITベンダーにシステム統合を丸投げしても、都市銀行が統合したときのように、ITシステムのトラブルが発生する危険性もあります。

 インドのアドハーのような生体認証も使われていないため、セキュリティ面でも不安が残ります。今のマイナンバーシステムではパスワードが使用されていますが、必ずしもITリテラシーが高くない高齢者も安心して使えるのでしょうか。

 これらの課題を解決するためには、既存のマイナンバーのシステムに横串を通して機能を付加していくのではなく、ゼロベースで全体構想を描き、国民データベースをゼロから構築すべきです。

 インドのアドハーは既存のIDの問題点を改善して統合するようなアプローチではなく、ゼロベースで仕組みを構想したことで日本の10倍の人口を誇るインドで普及率90%以上を達成しています。生体認証技術を新たに用いることで、文字が読めない人でも安心して使用できるシステムを構築したことも、普及率の上昇に大きく寄与しています。