ワゴンRが新車効果で約7年ぶりの首位に
ホンダの減産という敵失も

 現在、軽自動車は日本の自動車市場の4割近くを占めており、地方では生活の足として定着している。それとともに、かつてトヨタや日産など軽自動車に目を向けなかった大手が参入し、いわゆる乗用車メーカー8社の販売系列がすべて軽自動車販売を扱う時代に移行しているのだ。必然的に軽自動車販売は激戦化している。

 特に、近年ではホンダが軽自動車を強化し、軽自動車2強のスズキ・ダイハツ工業に割り込んできた。伊東孝紳元社長の時代に軽自動車に本腰を入れたホンダは、鈴鹿製作所に軽自動車開発・生産体制を一本化。その結果、大ヒットモデルであるN−BOXを生みだし、同車は19年12月から今年9月まで軽自動車月間販売で連続トップ(22カ月連続)を続けている。ホンダ国内販売の量販車として、「ホンダは国内では軽メーカー」と揶揄(やゆ)されるほどの位置づけを確保してきた。

 しかし、そのN-BOXの牙城を、スズキのワゴンRが崩したのだ。ワゴンRにとっては実に約7年ぶりの軽自動車販売首位である。しかも、N−BOXの10月の販売台数は、日産のルークスにも抜かれて3位に転落しており、減産の影響もあって軽新車販売でにわかに異変が起きた格好だ。

 ワゴンRの軽市場トップ奪還の理由だが、これはスズキが9月に発売した「ワゴンRスマイル」が台数を押し上げたことが最大の要因だろう。

 ワゴンRスマイルは、軽自動車市場の主流となっているスーパーハイトワゴン(背が超高い軽乗用車。代表車種がN−BOX、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」など)に対し、ハイトワゴン(背の高い軽乗用車)に分類されるワゴンRに、後席スライドドアを採用したものだ。

 元々ワゴンRは、スズキが1993年に投入し、軽の背高ワゴン市場を開拓して軽乗用車の主流となるきっかけをつくった車種である。当時の鈴木修スズキ社長(元会長・現相談役)が「軽自動車の規格である車高2メートル以内で、できるだけ工夫して使い勝手がよく、軽自動車としてコストを抑えた新たなジャンルのクルマ」として開発を主導、今日の軽自動車市場を創造した。