市場ではインフレへの懸念が足元で強まっている。そんな中で、中長期的な視点でインフレを引き起こす新たな三つのリスクが同時に発生する可能性が浮上している。そのリスクと対応策について考えたい。(マーケット・リスク・アドバイザリー代表 新村直弘)
足元のインフレは一時的ではない?
浮上する新たな3大リスク同時発生の可能性
市場ではインフレへの懸念が強まっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、11月中に量的緩和縮小(テーパリング)を開始することを決定した。
場合によると、テーパリング終了後に速やかに利上げが行われる可能性が出てきた。直近のフェデラル・ファンド(FF)金利先物ベースでは、市場は来年9月頃の利上げ実施を既に織り込み始めている。
足元では原油をはじめとする資源高をきっかけに、インフレ圧力が強まっている。大きな要因は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるものだ。
コロナ禍の資源国では、ロックダウン(都市封鎖)によって移動が制限され労働力が不足。生産工場の稼働が停止に追い込まれ、供給制約が発生している。
これに対し、先進国を中心にコロナ禍からの景気回復が進んで需要が高まり、需給が逼迫(ひっぱく)している。ただし、足元の需給逼迫は一時的なものであり、コロナ禍の収束とともに緩和されると考えられている。
ところが、足元のインフレが一時的なものではないと、やや懐疑的な見方をするFOMCのメンバーが増えている。
そこで考えたいのが、資源価格を押し上げる新たな3つのインフレリスクだ。この3つのリスクは、経験したことのない経済・市場動向になる可能性がある。
では、3つのリスクとは何か。「中国・インドの人口ボーナス期同時入り」「化石・非化石燃料の二重投資」「親米・親中経済圏の二重投資」の3つだ。次ページから順に説明していこう。