仕事の質を上げるのは経験年数だけでなく、
どれだけ考えて仕事をしたかの密度

 また、マニュアルに固執するあまり、小さなモヤッとどころではなく、大きな違和感をもつ接客を受けたこともありました。それは飲食店で料理を注文したあとの出来事でした。

 一通り注文を終えたあと、私はもう一度メニューを広げていました。「他にも美味しそうなお料理があるなあ!」「今度はこれにしてみようかな?」「食後のデザートはどれにしよう」そのような気持ちでメニューを見ていたのですが、スタッフの女性が満面の笑みで「メニューをおさげいたします」と……。

 何がなんでも手元にメニューを置いておきたかったわけではないので素直に手渡しましたが、「え?まだ見ているのに?」「何か急いでメニューをさげたい理由があるのかな?」と不思議に思いました。

 飲食店に勤務する何人かの方に意見を伺ったところ、今回のそれは「おそらく何も考えず、マニュアル通りに言っただけ」というのがもっとも近いようでした。

 日ごろから自分の頭で考える習慣があれば、「マニュアルにはそう書いてあったけれど、目の前のお客さまはまだメニューを見ている。さてどうしよう?」と考えて別の対応ができるようになります。早くからこのような習慣が身についている人は、必ず頭角を現します。

 仕事の質を上げるのは経験年数だけでなく、どれだけ考えて仕事をしたかの密度が非常に大切です。ぜひ接客1年生のうちにマニュアルの目的を読みとろうとする習慣、優先順位を考える習慣を身につけてくださいね。

頭角を現す人は必ずやっている! 接客1年生のうちから習慣にしてほしい大切なこと七條 千恵美(しちじょう ちえみ)
株式会社GLITTER STAGE 代表取締役 1973年京都府出身。同志社大学卒業後、日本航空に入社。お客さまから多くの賞賛をいただき、さらに際立った影響力を持つ客室乗務員として「Dream Skyward優秀賞」を受賞。取締役から表彰を受ける。また、TOP VIPフライトの中でも最上級ハンドリングのフライトであった皇室チャーターフライトのメンバーに抜擢された経験を持つ。経営破綻後の2010年より2年間、客室教育訓練室のサービス教官として約1000人以上の訓練生を指導し、多くの優秀なCAを輩出。教官としての会社評価は、評価最上位に該当するS評価を受けるなど教官としても数々の実績を残す。サービスマインドの強化と身だしなみの授業は評価が高く「気づきの女王」「身だしなみ隊長」と呼ばれる。現在は、株式会社GLITTER STAGEの代表取締役として接客マナー研修や社員教育などで全国を飛び回る。「強い牽引力とわかりやすさ」には定評がある。主な著書に、『接客の一流、二流、三流』(明日香出版社)、『これだけできれば大丈夫! すぐ使える! 接客1年生』(ダイヤモンド社)がある。