事件は現場で起きている
ガバナンス改革の話をすると、社外取締役を増やす、女性や外国人を社外取締役に迎えるといった形式論に走りがちですが、そのような一般解は経営においては存在しないことを認識する必要があります。
前述のとおり、大企業の経営陣には多様性が求められます。現社長が圧倒的な影響力を持つ独裁的なアーキテクトであれば、他の経営陣は調整型でも構わないかも知れません。
それぞれの企業、事業におけるライフサイクルのステージに合わせてマネジメントの多様性が担保されていれば、個別の企業単位では男性だけの経営陣や、女性だけの経営陣があっても構いません。もちろん、経営陣が日本人だけだから問題があるという訳でもありません。
しかし、当たり前の話ではありますが、経営陣を刷新したところで、現場の行動が変わらなければ新製品も生まれませんし、売上も利益も上がりません。
経営改革をする際には、視座を高く持ち自社の置かれたステージを分析すると同時に現場で起きている事件にもしっかりと目を配りましょう。具体と抽象を往復しながらゼロベースで全体構想を描くことで、全体のバランスが取れた地図を描くことができるはずです。
そして、その地図をしっかりと現場と共有することが大切です。目的地もわからずただ歩かされている集団と、一人ひとりが目的地を認識し意思をもって歩く集団とでは、歩幅も違えば見える景色も全く違うものになることは疑う余地もありません。
次回以降も、読者からの質問に答える形でアーキテクト思考について事例を交えながら解説できればと思いますので、こちらから質問をいただければと思います。
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。
坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、