リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。
「絶対にこれを実現したい!」
──「内側」から人を動かす原理
前回までの連載からもわかるとおり、「外因的な働きかけ=モチベーション」を中心としたリーダーシップは、もともとかなりの無理を抱えている。
しかし、時代や環境といった条件のおかげで、そんな無茶なリーダーシップが“機能できてしまっていた”にすぎないのだ。
したがって、それらの条件が失われていくことは、リーダーにとってはチャンスですらある。
「やる気」に頼ることなく、人間にとってより自然な「内因的な原理に基づくリーダーシップ」を取り入れる絶好のタイミングだからだ。
ところで、そもそも「内側から人を動かす」とはどういうことなのだろうか?
内側から人を動かす際の原理は、次の2点に集約される。
① ゴール
② エフィカシー
今回は「①ゴール」について見ていこう。
まず、人を動かす内的な刺激として、真っ先に思い浮かぶのは「楽しさ」とか「好奇心」「情熱」といったものである。
たしかにこうした感情は、人の行動の原動力となり得る。
たとえば、楽器演奏に楽しみを感じている人は、他人から「楽器を弾きなさい」と強制されたり、それに対する報酬を提示されたりしなくても、つまり、外的な刺激が与えられなくても、自発的に楽器を弾くという行動を取ることができる。
海外ドラマに夢中になる人も、視聴をやめると罰を受けるわけではないし、そこに何か実利を期待しているわけでもない。
その人の内側にある好奇心がドライバーとなって、動画視聴という行動が引き起こされているわけだ。
とはいえ、リーダーシップの文脈に置いてみた場合、「楽しさ」「好奇心」「情熱」といった感情だけに頼るのには無理がある。
感情というのはその場かぎりのものになりがちで、持続性や一貫性に欠けるからだ。
その時々で浮かんでくる想いは、たしかに行動のドライバーにはなり得るが、継続的にチーム・組織を動かす原理としてはあまりにも心許ない。
だからこそ、人を持続的に動かすときには、ある種の目的ないし目標、「ゴール」が必要になる。
人がなんらかの目標を持ち、「なんとしてもこれを実現したい!」「絶対にあれを達成するんだ!」という思いが生まれたときには、その人は外的な刺激を必要とすることなく、主体的に行動をとることができる。
逆に、「何を目的にするのか」を見誤ると、持続的に行動を生み出す動力は生まれなくなってしまう。
したがって、内因的な原理に基づいたリーダーシップの第一のポイントは、そうした「ゴール」のデザインということになる。