リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。

「やらされ感」がなくなる“認知科学的に正しい”リーダーのあり方Photo: Adobe Stock

「できる気しかしない」
=「ゴール世界への臨場感」

 この連載で私たちが探求しているのは、外因的な働きかけに頼らない、「内側から人を動かすリーダーシップ」がいかにして可能なのかということです。

 ここまでいろいろと回り道もしてきたので、今回はいったんここまでの流れを振り返ってみましょう。

 まず、私たちが注目したのが「人の行動は心的な情報処理システム(内部モデル)から生み出される」という認知科学のアプローチでした。

 無理に行動を捻じ曲げようとしたり、いちいち外的刺激を調整したりしなくても、内部モデルを書き換えることができれば、人の行動は自然に生まれ変わります。

 逆に、内部モデルを変えないかぎり、行動変容はきわめて表層的・短期的なものにとどまります。

 だからこそ、リーダーの根本課題は、いかにして人・組織の内部モデルを書き換えるかにあるのです。

 認知科学的にとらえ直した場合、リーダーシップとは、内部モデルを変更することで、人・組織の持続的な行動変容を促すプロセスにほかなりません。

 情報処理のシステムさえ変えられれば、おのずと行動は変わっていくし、いつのまにか元どおりということもありません。

 何も無理をしなくても、自然とチームが生まれ変わる状態をつくれるのです。

 ところが、この内部モデルは、われわれの意思や行動に先立って無意識レベルで作用するものですから、ダイレクトに書き換えるのは相当難しい。

 そこで注目したのが「ゴール設定」とそれが描く世界への「没入」でした。

 現状の外側にありながら、真のWant toに根ざしているゴールを発見し、そこに臨場感を生み出せたとき、内部モデルは根本から変わります。

 行動につながる情報処理システムのルールが書き換わる以上、人も組織もおのずと生まれ変わり、新しいゴールに向かうエネルギーを獲得することになるわけです。

「やらされ感」がなくなる“認知科学的に正しい”リーダーのあり方

 以上が、これまで見てきた「認知科学的なリーダーシップ」の要点です。

 人・チームが一定のゴールに対して高い「エフィカシー」を持っているとき、すなわち、「自分(たち)はこのゴールを達成できる/できる気しかしない」と信じているとき、その人はゴール世界に「没入」しています。

 ゴール世界への没入とは、それが現実であることを信じて疑わない認知が出来上がっている状態です。

 ゴールが描いている世界を「実現できる気がする/実現できる気しかしない/もう実現できたも同然だ」と信じている状態──それこそが高いエフィカシーの本質なのです。