リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。

「目標達成」にこだわる上司が、部下の「行動力」を奪うPhoto: Adobe Stock

まずリーダーからはじめよ
──チームが自然に生まれ変わる2段階

 チームが自然に生まれ変わるようなリーダーシップ実装には、大きく2つのフェーズがあります。

 フェーズ(1) リーダーがゴールを発見し、それに対するセルフ・エフィカシーを高める
 フェーズ(2) チーム内のメンバーにゴールを設定し、それに対するエフィカシーを高める

「セルフ・エフィカシー(自己効力感)」とは、ゴール達成能力に対する自己評価のことであり、「自分ならこれを実現できるかもしれない/できるだろう/できるはずだ」という手応えを意味しています。

 ここからもわかるとおり、まず大切なのは、リーダーがみずからの認知を変えていくことです。

 当のリーダー本人が、現在の延長線上にしかないゴールに目を奪われていては、周囲のメンバーの内部モデルを変化させられるはずがありません。

 リーダー自身が「できる!」という手応えを持っていて初めて、個々のメンバーたちのエフィカシーも高めることができるのです。

 リーダーのセルフ・エフィカシーは、チーム・組織全体に伝播していきます。

「目標達成」にこだわる上司が、部下の「行動力」を奪う

 目指すべき共通のゴール世界に対する「没入」が起こり、「自分たちはやれる/やれる気しかしない」という認知が生まれれば、チーム内に存在した「熱量の差」は消えていくでしょう。

 これを「集団的エフィカシー(Collective Efficacy)」といいます。

 リーダーシップの究極のゴールは、チームの集団的エフィカシーの水準を引き上げて、それを高く保ち続けることなのです。

 この連載の以前の記事で「チームがたるんでいる理由は、ほかでもなく、リーダー自身がたるんでいることにある」とお伝えしたことがあります。

※参考記事
なぜ、ダメなリーダーほど「部下のやる気」にこだわるのか?
https://diamond.jp/articles/-/287405

 あなたのチームが“たるんだ”状態に陥っている要因は、まずもってリーダーであるあなた自身のエフィカシーが低すぎることにありはしないでしょうか?

「これまでの延長線上でできそうなこと」だけをゴールにして、既存の内部モデルで処理できる世界に「埋没」してはいないでしょうか?

 まず変わるべきはリーダー自身なのです。

 その際、何をおいてもまずやるべきは、「現状の外側」にありながらも、そこに「没入」できるようなゴールを見つけ出すことなのです。

 そのゴールはまずもって、個人の「真のWant to」に根ざしていなければなりません。

 つまり、心の底からその達成が望ましいと思えるようなゴールである必要があるのです。

「地に足がついていない目標は不安……」「着実ではないことは苦手……」「未来志向になんてなれない……」などと感じている方もいるかもしれないが、その点はご安心ください。

 エフィカシーを強く感じられるゴール設定にはコツがあり、十分に再現性があります。

 つまり、その気になれば、誰でもできるのです。

 また、こうしたゴール設定にまつわる実践論は、リーダーが自分自身のゴールを見つけるときのみならず、メンバーに対して理想的なゴールを発見させたいときにおいても、必ず役に立つはずです。

 次回からはこれを見ていくことにしましょう。