リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。
「見えにくい・捨てにくい」がHave toの本質
チームが自然に生まれ変わる状態をつくりたいなら、個々人の「ものの見方(=内部モデル)」の変更を迫るようなゴールが必要になります。しかも、そのゴールには一定の「リアリティ=臨場感」がなければなりません。
だからこそ、チームを変えるゴール設定には、個々人の「真のWant to」が不可欠なのです。
人は何も具体的なメリットを持たないゴール世界に「没入」することなどできないからです。
では、どうすれば個人の「真のWant to」、つまり、本音中の本音で「やりたい!」と思えることを見定められるのでしょうか?
実際、リーダーの立場にある人もそうでない人も、いざ自分の「真のWant to」を見つけようとすると、いったい何をどうすればいいのかわからないという人がほとんどではないでしょうか。
それは当然といえば当然です。
ふつうに生活をしてふつうに仕事をしていると、個人のWant toのまわりには膨大な「Have to(やらなければならないこと)」が蓄積していくからです。
そんななかで、「自分は本当は何がしたいのだろうか?」とか「きみは本当は何をやりたいのか?」とかいった問いを発したところで、なかなかうまくいかないのは当然なのです。
では、Have toを捨てて、自分の真なるWant toに目覚めるには、具体的にどうすればいいのでしょうか?
これには大きく2つのステップがあります。
ステップ(1) Have toを洗い出し、真のWant toに気づく
ステップ(2) Have toを捨てることを決断し、その捨て方を考える
Have toは自分の行為を決める際の「無意識の枠組み」になっています。
したがって、自分がどんな「やらなければならない」に縛られているかをまず顕在化したうえで、自分の価値観を探索するのが望ましいのです。
もう1つ重要なのが「決断が先、プロセスはあと」というポイントです。Have toに気づいたら、実際にそれを手放していく必要がありますが、「どのように捨てるか」というプロセスにこだわっていては、いつまで経ってもHave toは捨てられません。これは、われわれの心理的機構にある種の「ホメオスタシス(恒常性)」が働いているからです。
したがって必ず「決断」を先行させる必要があるのです。
ですが、今回はステップ(1)の前半部分「Have toを洗い出す」方法について見ていくことにしましょう。
「給料や報酬をもらう以上、やらなければならない」と自分に言い聞かせないと、なかなか手をつけられない……そんなタスクは誰にでもあるのではないでしょうか。
それらはすべてHave toである可能性が高いと言えます。会社や株主から課される目標、顧客に対する責任、よくわからない会議や面倒な雑務は、多くの人にとってHave toの典型でしょう。
あるいは、「住宅ローンがあと20年残っているから、仕事を辞めるわけにいかない」などと嘆く人は、仕事そのものがHave toになっている可能性もあります。
Have toのほとんどは個人のなかに潜在化されています。
だから、いつも何かをやるたびに「ああ、これをやらないといけないな……」と明確に意識されるわけではありません。
むしろ、「そうするのがあたりまえ」になっており、「気づけばいつのまにかそうしてしまっている」ことこそが、Have toの何よりもの本質なのです。