「やっていること」をリスト化し、
まず脳内でやめてみる
その最たるものが「出社」でしょう。惰性というのはHave toの典型であり、日常のあらゆるところに入り込んできます。
「仕事は会社でやるものだ」という思い込みにとらわれていた大半の人は、これまでずっと「出社」というHave toとともに生きてきました。どれだけ疲れていても、気分が乗らなくても、とにかくきっちりオフィスに顔を出す──それがあたりまえの世界にわれわれは住んでいたわけです。
しかし、外出自粛要請などによってリモートワークが導入された途端、みんなを縛っていた「会社=行かなければならないもの」というHave toが外れることになりました。
それ以降、人々のなかには、「自分は、すし詰め状態の満員電車に乗ったり、早朝から長時間かけて自動車通勤したりする人生を望んでいたわけではない!」というNOT Want toの自覚が生まれたはずです。
この世の中の変化に伴い、「仕事=会社でやるべきもの」「会議=対面でやるべきもの」「買い物=お店でするべきもの」など、膨大な範囲でのHave toが顕在化し、全世界レベルで人々の内部モデルが修正されることになりました。
このように、まず重要なのは「自分にとって、それはHave toにすぎないのだ」と認識することです。
その自覚を持つだけでも、真のWant toに近づく大きな一歩と言えるからです。
「Have toの洗い出し」をするときには、典型的な1日の流れを振り返りながら、朝起きてから夜眠るまでの行動をリストアップするのがおすすめです。
A4用紙などを用意し、「ふだんやっていること」「昨日やったこと」などを箇条書きにしてみましょう。
それぞれのアクションはなるべく細かくブレークダウンするのが望ましいですが、ひとまずは思いついた順でかまいません。
リストをつくり終えたら、上から順に「明らかにHave toだと言えそうな事柄」を横線を引いて消していきましょう。
もしいちばん下までチェックしたときに、もう何も残っていないのであれば、その人の人生は「やりたいわけでも、得意なわけでもないが、やらなければならないこと」で満たされているということです。
Have toだと言い切れなそうなものがまだ残っていた場合は、「仮にそのアクションをいますぐ放棄したとしたら、自分は何を失うだろうか? 代わりに何を手に入れるだろうか?」と自問してみましょう。
冷静に考えてみると、やはりそれ自体がとるに足りないHave toだと気づくケースもあります。
現実問題として、いますぐすべてのHave toを捨て去るわけにはいかないにせよ、現在の自分がどれほどHave toで満たされているのかを、こうやって確認しておくのは無駄ではありません。
日常のなかに隠れているHave toを発見し、それを自分が心から望んでいるわけではないと意識するだけでも、内部モデルの部分的な修正は期待できるからです。