中学2年から株ひと筋で、株式投資歴30年以上のベテラン専業投資家、かぶ1000が『賢明なる個人投資家への道』を著した。中学時代から体育のジャージ姿で地元の証券会社に通い詰め、中高年の投資家にかわいがられ、バブル紳士にお金儲けのイロハを教えてもらった。中学3年生で300万円、高校1年で1000万円、高校2年生で1500万円へと株式資産を増やす。会計系の専門学校卒業後、証券会社の就職の誘いを断って専業投資家の道へ。2011年に“億り人”になると、2015年に3億円、2019年に4億円を突破。アルバイト経験さえない根っからの個人投資家が、学校では絶対に教えてくれないお金の知識と増やし方を徹底指南する。

不動産投資 マンションPhoto: Adobe Stock

株式と不動産の市場に見られるインフレ

私は昔から現金も預金もできるだけ持たず、投資に回してお金に働いてもらう主義ですが、百歩譲ってデフレの間なら、現金・預金で持っていても価値の目減りは避けられます。

しかし、2012年のアベノミクス以降、量的緩和でお金が市中にじゃぶじゃぶと供給されるようになり、状況は一変しました。

不景気は相変わらずですから、企業も設備投資などにお金を使いにくいため、いわゆる“カネあまり”の状況が続いています。それにより、デフレからインフレへの転換が起こってきたのです。

それに加えて、2020年以降の新型コロナウイルスの経済対策では、日本に限らず、先進諸国で大規模な金融緩和と財政出動が行われたので、カネあまりは世界的な現象になりました。

「カネあまり=インフレ」であり、余ったお金はおもに株式市場と不動産市場に流れ込みました。

その結果、コロナ禍で一時は1万6000円台まで下落した日経平均株価は急回復して、2021年2月には1990年8月以来、30年半ぶりに3万円の大台に乗せました。

アメリカのニューヨーク市場の「ダウ平均株価」(ニューヨーク・ダウ)と、IT企業などが占める「ナスダック総合指数」といったインデックス(株価指数)は、ともに2021年に入って史上最高値を更新したのです。

日本で株式とともにインフレの影響がはっきり表れているのが、不動産価格です。

国土交通省が公表している「不動産価格指数」(年間およそ30万件の不動産の取引価格情報をベースとして指数化したもの)は、2012年のアベノミクス以降、じわじわと上昇を続けています。

特に上昇の度合いが大きいのが、マンション(区分所有)の価格です。2010年の平均を100とした場合、2021年には165.8、つまり約1.6倍になりました(令和3年6月分・季節調整値)。

2010年に4000万円で買えたマンションが、2021年には6400万円になっているということです。

マンション価格を基準にすると、2010年の1万円は、2021年には6250円の価値しかないことになります。

東京都の港区や千代田区のような都心の一等地にある高級マンションの場合、坪単価がこの10年で2倍になったところもあります。

こうしたマンション価格を基準にすると、2010年の1万円は、2021年には半分の5000円の価値しかなくなったともいえるのです。

少子高齢化で人口減少が進む日本では、地方での不動産価格は下がる可能性があります。

しかし、話を東京都心の一等地に限ると、インフレの進行によって不動産価格はさらに上昇することも考えられます。

価格が上がったとはいえ、ニューヨーク・ロサンゼルス・ロンドン・パリ・香港・ソウルといった海外の主要都市に比べると、東京の不動産価格は割安であり、海外から今後も資金が流入する余地があるからです。

日本では土地の所有権が認められていますが、世界第2位の経済大国である中国では認められていません(個人が購入できるのは、建物とその土地の使用権のみ)。

そのため、日本の土地を所有したいと考える中国の富裕層が多くなり、東京都心の地価を押し上げる要因の1つになっています。

このまま不動産価格が上がり続けると、都心の不動産が買えるのは裕福な日本人と外国人だけになり、多くの人は黙って指をくわえて見ていることにもなりかねません。

ちなみに、明治5年の東京・銀座の土地は、1坪5円でした。

それが現在では1坪4億円で取引される物件も出てきています。

明治時代の公務員の初任給は50円(明治27年)でしたから、公務員が初任給で銀座の土地を10坪買っていれば、その子孫は40億円を手にすることができた計算になります。