中学2年から株ひと筋で、株式投資歴30年以上のベテラン専業投資家、かぶ1000が『賢明なる個人投資家への道』を著した。中学時代から体育のジャージ姿で地元の証券会社に通い詰め、中高年の投資家にかわいがられ、バブル紳士にお金儲けのイロハを教えてもらった。中学3年生で300万円、高校1年で1000万円、高校2年生で1500万円へと株式資産を増やす。会計系の専門学校卒業後、証券会社の就職の誘いを断って専業投資家の道へ。2011年に“億り人”になると、2015年に3億円、2019年に4億円を突破。アルバイト経験さえない根っからの個人投資家が、学校では絶対に教えてくれないお金の知識と増やし方を徹底指南する。

コーヒー 支払いPhoto: Adobe Stock

コーヒー1杯6000円の時代がやってくる?

インフレの進行を実感できるより身近なものに、テーマパークの入場料があります。

東京ディズニーランドが開園したのは、1983年。

チケット(ワンデー・パスポート)は当時、3900円でした。それから毎年のように値上げを続けており、バブル期の1989年には4400円になりました。

そして2021年時点では最高9400円と、バブル期の2倍以上になっています。

ディズニーランドのチケット代を基準に考えるなら、1989年の1万円は、30年後の2021年ではおよそ半分の5000円の価値しかないのです。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の1デイ・スタジオ・パスの料金も、右肩上がりを続けています。

開業した2001年には5500円だったものが、2021年時点では、最大9200円になっているのです。

1デイ・スタジオ・パスを基準に考えると、この20年間でお金の価値は約40%減り、2001年の1万円は、2021年では6000円の価値しかないことがわかります(ディズニーランドもUSJも、もっともスタンダードな大人1日料金で比較しています)。

あれこれ例を出しても、コンビニのおにぎりやハンバーガーなどの値段は上がっていないので、インフレという実感が湧かない人が多いと思います。

食べ物などの生活必需品の値段に限っていうなら、日本の物価は後進国並みだからです。

それが、消費者物価指数がいつまでたっても上がらない理由の1つでもあります。

不動産価格やテーマパークの入場料などと異なり、生活必需品を扱う企業側は値上げで消費者離れが起こらないように工夫を重ねています。

その企業努力がわかりやすいのは、食品業界です。

たとえば、紙パックの牛乳では従来1L入りだったものが、900ml入りに変更された商品があります。値段すえ置きでも、容量が10%減ったのですから、実質的には10%の値上げです。

同じようにヨーグルトの容量を450mlから400mlに変更したメーカーもあります。

このように値段すえ置きで内容量を減らす実質的な値上げは、「こっそり」「隠密」を意味する英語から「ステルス値上げ」とも呼ばれています。

食品メーカー側は、単身世帯の増加や食の細い高齢者が増えたことなどをスリム化の理由としていますが、それらに加えて原材料費や輸送費などの上昇分を価格に転嫁せざるを得なくなっているのです。

生活に密着する植物油や小麦粉の値段も、2021年に相次いで値上げされました。

原料となる植物油の価格上昇により、キユーピーでは主力商品のマヨネーズを、2021年7月から最大で10%程度値上げしています。

また、2021年には、「ウッドショック」と呼ばれる木材価格の高騰と品不足が深刻化しています。

アメリカや中国で戸建て住宅市場が活況を呈したため、木材先物価格は1年あまりで一時約5倍にまで高騰しました。

木材の約6割を輸入に頼る日本にも影響がおよび、輸入木材の価格は1.3~1.5倍になったのです。

いまはインフレという実感が湧かなくても、すでに川上の原材料などは値上がりが始まっています。

しばらくすればコンビニのおにぎりやハンバーガーといった身近な商品にも値上げの波が押し寄せるようになり、インフレが実感できるようになるかもしれません。

そうなる前に、インフレに備えて、手元の現金を価値が保全できるものに置き換えておくことが大切になってきます。

余談ですが、私の知り合いにネパール出身の男性がいます。

彼は日本の永住権を持っていますが、コロナ禍以前はときどきネパールに帰っていたそうです。

その彼がいうには、ネパールの物価はこの20年で20倍以上になったとか。

「昔は2円で飲めていたコーヒーが、いまは50円もする」と嘆いていました。

ひょっとすると日本でも、「以前はコーヒーが300円で飲めていたのに、いまは6000円もする!」と嘆く時代がやってくるかもしれません。