中学2年から株ひと筋で、株式投資歴30年以上のベテラン専業投資家、かぶ1000が『賢明なる個人投資家への道』を著した。中学時代から体育のジャージ姿で地元の証券会社に通い詰め、中高年の投資家にかわいがられ、バブル紳士にお金儲けのイロハを教えてもらった。中学3年生で300万円、高校1年で1000万円、高校2年生で1500万円へと株式資産を増やす。会計系の専門学校卒業後、証券会社の就職の誘いを断って専業投資家の道へ。2011年に“億り人”になると、2015年に3億円、2019年に4億円を突破。アルバイト経験さえない根っからの個人投資家が、学校では絶対に教えてくれないお金の知識と増やし方を徹底指南する。
インフレリスクをはらむようになった
お金の歴史
インフレが起こるのは、お金の宿命のようなものです。
しかし、歴史をふり返ってみると、インフレがつねに起こっていたわけではありません。
インフレでお金の価値が下がるようになったのは、「不換紙幣」の時代になってからのことです。
ここで簡単に、お金(貨幣)の歴史をふり返っておきましょう。
人類が文明化してものの生産や流通が活発になると、それまでの「物々交換」の代わりに、誰もが利用価値を認めて受けとりを許諾するものが、お金の役割を果たすようになります。
具体的には、穀物・オリーブ油・貝殻・塩・毛皮・家畜・奴隷などで、これらを「自然貨幣」と呼びます。
その後、自然貨幣は、「金属貨幣」にとって代わります。
もののなかでも、特に価値が高いと考えられた「金」「銀」などの貴金属が使われるようになったのです。
これらの貴金属は時間がたっても腐食しにくく、しかも鋳型に流し込めば、大量に同じ品質の硬貨ができるという利点があります。
ヨーロッパではおもに金と銀を硬貨の材料としていましたが、中国や日本などでは当初は銅が盛んに用いられました。
のちには中国や日本でも、金貨や銀貨が流通するようになりました。
経済が発展して流通するお金が増えると、それに見合った貨幣をすべて貴金属でつくり出すのが難しくなります。そこで、運びやすく、安価で大量につくれる紙製のお金が使用されるようになります。
それが「紙幣」、いわゆるお札です。
世界で初めての紙幣は10世紀に中国でつくられ、17世紀にはヨーロッパでもつくられるようになります。
日本でも17世紀の江戸時代には、各藩で「藩札」という紙幣が発行されるようになりました。
近代になると、先進諸国では、「兌換紙幣」と呼ばれる紙幣が流通するようになります。
兌換とは「引き換える」とか「とり替える」といった意味で、兌換紙幣は同額の金貨や銀貨との交換を約束した紙幣です。
20世紀初頭まで、先進諸国は兌換紙幣を発行していましたが、最終的には現在のような「不換紙幣」に置き換わりました。
不換紙幣とは、金貨や銀貨との交換が保証されていない紙幣です。
1971年になり、それまで金と交換できる唯一の紙幣だった米ドル紙幣が、一時的な交換停止を発表したことがきっかけとなり(結局は一時的ではなく、恒久的な停止となりました)、世界経済は大きく変わることになります。
これを、その発表を行った当時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンの名をとり、「ニクソン・ショック」と呼びます。
不換紙幣になると、政府や中央銀行がその裏づけとなる金貨や銀貨が手元になくても、必要に応じて輪転機を回していくらでもお金が刷れるようになりました。
それによってお金の価値が下がり、つねにインフレリスクをはらむようになったのです。