実際、日本酒の国内消費量は1973年をピークに現在はその約3分の1以下と、減少の一途をたどっている(下図参照)。

「僕は、日本酒のクオリティーが落ちたとは思っていません。むしろ味のレベルは、長い歴史の中で今が最高だと思っています。

 でも、『うまさにとことんこだわる』『技術力が高い』だけでは、もはや差別化は難しい。今必要なのは、味の解析よりも業界のデータ解析です」

 すなわち、「適切な情報の提供」「きちんとした品質の担保」「良い物を確実に買える仕組み」を構築するためのデータ解析だ。さらに、先人であるワインはいかにその仕組みを手にしたのか、それを科学的かつ体系的に追究するという意味でのデータ解析である。

 日本酒の国内消費が減少の一途をたどる一方、和食ブームをきっかけに日本酒の海外向け販売量は右肩上がりで伸びている。実際、海外に活路を求める蔵元たちは増えている。

「海外への販売数が伸びている今こそ、可能性を広げるためにも、“売れる”ということはどういうことか、業界を挙げていま一度よく考えなければなりません」

 続く後編では、実際に日本酒関連ビジネスに取り組む中田氏が、ワインに学びつつ、いかに業界にイノベーションを起こそうとしているか、詳述していこう。