90万部超のベストセラー『超一流の雑談力』著者安田正さんによる、新しい話し方の本武器になる話し方が12月8日に発売になりました。著者は、これまで30年以上、コミュニケーションや英語をテーマにした研修や講演を行ってきて、経営者を含む、何万人というビジネスパーソンとお付き合いをしてきました。
そうした中で強く感じるのは、なんともったいない話し方をしている人が多いのか! ということでした。本来ならもっと評価を受けていい人、もっとレベルの高い仕事ができるはずの人、よりたくさんの収入に恵まれるべきであるはずの人が、不当な扱いを受けたり、苦労を強いられたりしているということです。この連載では本書で紹介している『武器になる話し方』の方法、コツをご紹介していきます。

意見に反対したいときの<br />「受け止める」技術とは?Photo: Adobe Stock

伝え方の前に、まず考えてほしいこと

 一般的に「話し方」というと、「いかに上手にしゃべるか」「おもしろい話ができるか」「言いたいことをどう言うか」といったことを考える人が多いと思います。

 ですが、まずはその認識をあらためることをおすすめします。話し方で何よりも重要なのは、話の受け止め方、つまり、聞き方なのです。

 このことをお伝えすると、多くの人は「いやいや、話せないから悩んでいるんだよ」「聞き方なんて大した問題じゃないよ」と言います。

 ですが、その認識が大きな間違いのもとです。話し方が下手だから問題なのではなく、「聞き方がなっていないから、会話がうまくいかない」ことのほうがはるかに多いということを知ってください。

 反対のことを言えば、聞き方がしっかりしている限り、会話で失敗をすることはないのです。自分の話し方(伝え方)の改善については、そのあとで構いません。

 ここで一つ例を見てみましょう。

Before よくある聞き方
A「先日の営業会議で話していた件ですけど、やはり最初の企画を通したいですよね、あれだけ時間かけて練り上げたのだから」
B「でもさ、そうは言うけど現実的にはなかなか難しいもんだよ」
A「…………」

 Bのこの聞き方のどこがよくないかわかるでしょうか。

 それは、否定から入ってしまったことです。相手が違うことを言ってるなぁと思うと、人はつい「いや……」「でも……」「だけど……」と、否定してしまいます。

 しかし、自分がよかれと思って発言したことを、「でもさ……」と最初から否定されたらどうでしょうか?

「この人は話してもわかってもらえなさそうだな」「話してもムダだな」「仲良くなれなさそうだな」……と、そんなふうに感じないでしょうか。

 こうなってしまうと、相手の話が耳に入ってこなくなり、そればかりか、相手の言葉にいちいち腹が立ってしまい、感情的に反論したくなるかもしれません。

 そうなれば当然会話にはなりません。実はこのように、聞き方がよくないことで人間関係に摩擦が起こってしまう、話がこじれてしまうケースが多いのです。

 では、どうすれば正解なのでしょうか?

 まずは、「相手の気持ちを受け止めるつなぎ言葉」を使うことです。

気持ちを受け止めるつなぎ言葉
・「たしかに」
・「そうなんですね」
・「わかります」

 相手の意見に反論したい場合でも、まずはこのような言葉を使って、受け止めてみてください。

 まずこのような言葉が聞けると相手は安心できます。そして安心できると、そのあと反対意見が出てきても客観的に取り入れてもらいやすくなるのです。

 このことをふまえて、先ほどの例をもう一度見てみましょう。

After 武器になる聞き方
A「先日の営業会議で話していた件ですけど、やはり最初の企画を通したいですよね、あれだけ時間かけて練り上げたのだから」
B「
たしかになぁ。たいへんだったもんなぁ。特にAはよくがんばってたしな」
A「そうなんですよ。……まぁもちろん現実的には難しい部分もあるかもしれないですけど」
B「そうだね、現実的なところに落とし込むには、もう一工夫が必要かもしれないね」

 このように、最初の受け止め方を一つ変えるだけで、相手の気持ち、その後の話の流れがガラッと変わることが多々あります。

 特に意見交換や議論の場でおすすめしたいのは、「……ああ、今の話は勉強になったなぁ」と自分につぶやくように締めくくるという技です。

 相手は安心した上に「認められた!」という満足感を感じてくれやすくなり、話し合いが円滑になります。

特に要注意なのは、「自分が自信を持っているテーマ」

 なお、会話の中で否定が出がちなのが、自分が自信のあること、あるべき論を持っている事柄についてです。

 たとえば自分の専門分野、好きなことや人、趣味、思想などには注意してください。

 熱を持っている分野になると、「自分のほうが正しい」「本当のことを教えてあげたい」といった気持ちが強く出てしまって、相手の話を受け止めずに否定をしがちです。否定や強い主張を繰り返せば、相手は心を開かなくなります。

 私自身も、若い頃には相手を否定したり、批判したりすることが多かったのです。私の中で「あるべき論」があり、それをついついそのまま言ってしまっていました。

 しかし、さまざまなコミュニケーションの体験を通して、相手に「会話を続けたくないな」と思わせてしまったら関係性も終わってしまうと気づき、軌道修正しました。

 言いたいことをどう伝えるかではなく、まずは、相手に自分の話を聞いてもらうにはどうすればいいかを考えてみてください。本当の話し方というのは、そこから始まるのです。

武器になる
話し方

相手の意見に反対のときでも、
「たしかに」「そうなんですね」「わかります」と受け止めよう