プロから見た「相続税の面白さ」とは?

――本のプロフィールには、「大学卒業前から国内最大手の税理士法人に正社員として入社し、相続専門の部署で6年間、相続税に専念した」とあります。入社時から「相続税の専門家として生きていく」と決めていたのですか?

橘:いや、実は違うんです。私は最初、「法人に強い税理士になりたい」と考えていました。採用面接でも、そう宣言したんですよ。でも面接官が「万が一、希望と違う、相続専門の部署に配属されたらどうしますか? 不平不満を言いませんか?」と聞いてきたんですね。

――採用面接の「あるある質問」ですね。

橘:そうです。こんなの、「もちろん不平不満なんて言いません。絶対に一生懸命やります」と答えるに決まっているじゃないですか(笑)。そして、いざ内定をいただき、入社したら、本当に相続専門の部署に配属されていた……。これが、私が相続税に携わるようになった最初のきっかけですね。

――入社して配属を聞いて「本当に相続専門の部署に配属されるのか!」とは思いませんでした?

橘:もちろん思いましたよ(笑)税理士試験において相続税法は「選択科目」のひとつです。その「選択科目」で法人税法と消費税法を選んで合格していた私にとって、相続税法は正直、まったく勉強していない分野でしたから。

――その状態で、税理士としてのスタートがいきなり「相続専門の部署」。焦りましたでしょう?

橘:焦りました。入社早々、始業前と終業後に猛勉強の日々が始まりましたよ。相続税法の科目だけ、税理士試験講座を取り直して、一から勉強しました。勤務中も、実務でわからない論点が出てきたら、ひとつずつ条文を見て調べたり……そのようなトレーニングをひたすら積みましたね。

――働く中で、どのようなところに「相続税」に携わる面白みを感じ、相続を専門にしていこうと考えたのでしょうか。

橘:相続税に携わる面白みは、大きく2つあります。1つは、「相続税」という税金が、税理士の腕によってその額が大きく変わるものであることです。わざわざ「グレーゾーン」を攻めずとも、知識を武器に、やり方を工夫するだけで、クライアントの納税額が大きく変わる。勉強のしがいがあると感じます。

――なるほど! もう1つは?

橘:もう1つは、税務調査対応です。こちらは「面白い」より「ハラハラする」ほうがウエイトが大きいのですが……やはり、税務署との交渉次第でクライアントの納税額が大きく変わってくるので、やりがいを感じます。
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橘:自分が勉強すればするほど、腕を磨けば磨くほど、結果がついてきて、クライアントにも感謝していただける。本当にやりがいのある仕事です。

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税理士。円満相続税理士法人代表
中学・高校とバンド活動に明け暮れ、大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(「資格の大原」主催の法人税法の公開模試では全国1位)。大学卒業前から国内最大手の税理士法人山田&パートナーズに正社員として入社する。税理士法人山田&パートナーズでは相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手がけた相続税申告(相続手続)は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算500件以上。相続税の相談実績は5000人を超える。また、全国の銀行や証券会社を中心に通算500回以上の相続税セミナーの講師を務める。2017年1月に独立開業。現在、東京・大阪の2拠点で相続専門税理士が多数在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。「最高の相続税対策は、円満な家族関係を構築すること」をモットーに、依頼者に徹底的に寄り添い、円満相続実現のために日々尽力する。週刊東洋経済や女性自身、日本経済新聞、朝日新聞など、さまざまなメディアから取材を受けている。限られた人にしか伝えることができないセミナーよりも、より多くの人に相続の知識を広めたいという想いから、2018年にYouTubeを始める。自身が運営する【円満相続ちゃんねる】は、わかりやすさを追求しつつも、伝えるべき相続の勘所をあますところなく伝えていると評判になり、チャンネル登録者は6万9000人を超えている。2020年に刊行した初著書『ぶっちゃけ相続』は4万6000部を突破するベストセラーとなった。
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