豊田佐吉の仕事に対する心構えをまとめた「豊田綱領」
磯谷 会社のトップは、会社を成長させ発展させなければならない。これは使命だと思う。あとは従業員の幸せを願うと同時に、お客様、協力会社、国、地域に役立たなければならないと思うこと。それが思いやり。これこそ僕は「豊田綱領」そのものだと思うんだ。だから、「豊田綱領」というのが大事だなと思うし、今の豊田自動織機の大西 朗社長も、「豊田綱領」の「心の基本」があるからラクだと言っている。「豊田綱領」をみんなで守ろうと、大西社長は今も言っているわけだ。
■豊田綱領
一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
一、華美を戒め、質実剛健たるべし
一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし
稲田 豊田佐吉(豊田自動織機の創業者)の精神を明文化したものですよね。磯谷さんのお話の中にも、「豊田綱領」がよく出てきます。
磯谷 「豊田綱領」こそ、いま多くの会社や経営者が本当に学ぶべきことであると思う。
稲田 豊田自動織機の当時の長草工場の2階の会議室の左上に、木版に書かれて飾ってあったのを、いまでも覚えています。
磯谷 こういうことが決まっているからね、うちは楽だね。「豊田綱領」があるから。よう当時、こんな上手につくったなと、この「豊田綱領」は。
稲田 全ての根にあたる部分になりますね。
磯谷 「豊田綱領」も、佐吉が織機を発明して8年後に、豊田喜一郎さんが自動車部をつくって、その2年後にできたわけだけど。豊田紡織会社と織機の中で自動車部ができて、そうすると人数が1万人ぐらいになったからね。その1万人を1つの心にするためには、こういう心が必要だと。だから、佐吉の仕事に対する心構えとして、こういうのができたわけだ。
稲田 「豊田綱領」は、そのころにできたのですね。
磯谷 そう、昭和10年。いま言ったように、1万人の従業員の心構えをどういうふうにまとめたらいいかということで。その時、喜一郎さんは常務だった。豊田利三郎社長とスタッフでね。佐吉の仕事に対する心構えとしてまとめた。
稲田 そうなんですね。喜一郎さんと利三郎さんが、佐吉さんの言っていることを文にまとめたということですか。
磯谷 そう、仕事に対する心構えをつくってね。それがいま、基本になっているわけだ。社是になっとるのは、トヨタグループでうちだけだと思うがグループもこれを基本にしていて、トヨタ自動車は自動車事業を軸に、世の中に感動を提供しようと事業展開を行っている。