中学受験激戦地「世田谷」

 付属校を新設するには敷地を確保し、校舎を建設して教職員も集めなければならず、少なくとも100億円単位の投資が必要となる。法人の吸収合併でも、横浜の例で見たように中央大は移転新設で巨費を投入している。その点、系属化の場合は高大連携により教育理念を同じくするなどといった条件がいくつかあるものの、実質的には大学の看板貸しであり、さほど投資は必要とならない。

 さらには、「関学コース」(帝塚山学院)や「東洋大学グローバルコース」(麹町学園女子)のように、大学側と一定の条件を整えたうえで、系属校と同等程度の推薦枠を得る「コース制」という第三の道もある。これについては、山本三郎・麴町学園女子校長のインタビューをご覧いただきたい。

 コース制の導入や実質的な系属化といった内容本位の高大連携の延長上でのつながりは、今後とも次々に表面化してくることだろう。

 小6の2人に1人が受けるといわれるほど、世田谷区は中学受験が盛んなエリアである。私立中高一貫校も23区最多の20校を数え、実受験者数も最多である。成城に隣接する調布市に新設されたドルトン東京学園も、開校3年目ですっかり人気校の仲間入りをしている。世田谷に住む保護者には中学受験経験者でいわゆる“士”業の従事者も多く、そのことも中学受験熱に拍車を掛けている要因といえそうだ。

 大学付属の中高一貫校も、男子校の東京都市大学付属、女子校の昭和女子大学附属昭和、共学校には東京農業大学第一、東京都市大学等々力、成城学園などがある。ただ、早慶やMARCHの付属・系属校はいままでなかった。その意味で、明治大が世田谷に進出を決めたことの衝撃は、今後、大きく響いてくるだろう。入試日の設け方にもよるが、第一志望にも併願にも使い勝手の良い学校となる可能性が大きいからだ。

 23年は、目黒星美学園が女子校から共学化し、サレジアン国際学園世田谷として生まれ変わる。ここに明治大学付属世田谷も加わることで、世田谷区はさらに中学受験生の吸引力を増すことになりそうだ。