メーカー(製造業)には自動車、電機、食品……などさまざまな業種がありますが、いずれも「商品をつくって顧客に届ける」という点は共通です。では、商品をつくる「工場」が具体的にどのような機能をもっているかや、どんな部門があるのかを知っていますか? メーカーを目指す人ならぜひ知っておきたい基本について、書籍『全図解メーカーの仕事 需要予測・商品開発・在庫管理・生産管理・ロジスティクスのしくみ』から紹介していきます。

メーカーのものづくりの中核に位置する「工場」

皆さんは、小学校の社会科見学で訪れた「工場」のことを覚えているでしょうか。筆者の住む千葉では、野田市のお醤油工場(キッコーマンもの知りしょうゆ館)や千葉市の製鉄所(JFEスチール東日本製鉄所千葉地区見学センター)といったメーカーの工場が、定番の社会科見学コースになっています。

ここで圧倒的な規模の生産活動を目の当たりにした小学生の多くは「メーカー=ものづくり」という印象を得ます。

一方で、近時はメーカーがものづくりをあまり強調しない風潮もあります。例えば日本を代表する自動車メーカーが「売るのは自動車というものではなく、モビリティというサービスである」といった主旨のメッセージを前面に出すようになりました。

もちろん顧客の需要に即した商品の提供や設計を行うことがメーカーにとって極めて重要であることは確かですが、その一方でメーカーを名乗るからには「ものづくり」の機能をもっていることが前提となっていることもまた事実です。

ものづくりの現場(工場)で働く人々

ものづくりの現場である工場は、生産する対象によって、さまざまな形態をとります。自動車のように複数の原材料を組み立てることによって商品を作る工場もあれば、鉄鋼や食品のように原材料の性質を変化させることによって商品を作る工場もあります。実務の世界では前者を組立型、後者をプロセス型とよんだりします。

ただし「商品を作る」という点に注目した場合、外部から原材料を調達して手を加えることで新たな価値を生み出す活動を行っている点では共通しています。工場で原材料に付与されるこの新たな価値は付加価値ともよばれ、これをいかに効率的に生み出すかという点が工場の、ひいてはメーカーの企業としての収支を決定づけるといっても過言ではありません。そのため、ものづくりの現場である工場は付加価値を継続的に生み出すため組織的に活動しています。

工場の組織は企業によって多少異なりますが、多くのメーカーでは次のような機能(部課)が含まれます(図7-1)。

メーカーに就職したい人なら知っておきたい「メーカーにおける工場の役割」ものづくりの現場(実行・管理・統括)
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おそらく、皆さんが社会科見学でメーカーの工場を訪れた際に笑顔で出迎えてくれた年配の男性が工場長、見学したものづくりの現場が製造課であった可能性はかなり高く、もしかするとラッキーな方は機械のしくみを生産技術課のエンジニアが詳しく話してくれたかもしれません。これらの部門はその役割によってものづくりを「管理」する部門と、「実行」する部門とに整理することができます。

ものづくりのパフォーマンスを測る「QCD」

メーカーの工場で行われているものづくりは、商品を適切なQCD〈品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)〉でカスタマーに供給することを目指して行われます。

ここでいう品質とは顧客の満足を生み出すためにメーカーが提供する価値を広く含む概念を指しています。コストはこの価値を商品として生産するために投じられる経営資源、納期はカスタマーから見た商品の納期を指します。

これら「QCD」は商品供給のしくみのパフォーマンスを評価するための切り口としてメーカービジネスで広く用いられています。