「結局テレワークより出社が早い」という結論に至ってしまう残念な理由Photo:PIXTA

2020年に新型コロナウイルスの流行が始まって以降、感染防止対策の一つとして日本企業はテレワークの活用を推進してきた。しかし、長引くコロナ禍で、多くの企業がテレワークを継続する難しさに直面している。「結局出社した方がいい」と結論付けてしまう企業も出てきているようだ。本当の意味で日本企業にテレワークを定着させるには何が課題となるのか、考えてみよう。(パーソル総合研究所上席主任研究員 小林祐児)

日本企業で「ハイブリッド・ワーク」が
うまくいかないワケ

 2022年の労働を考える上で、「テレワークがどの程度定着するのか」は大きなトピックです。昨年は秋頃に新型コロナウイルスの感染状況が一度落ち着き、10月に緊急事態宣言が解除されたことで、多くの企業で出社が増えました。ですが、年が明けると「オミクロン株」が猛威を振るい、再び全国で感染が拡大しています。

 グーグルが公開している移動人口データを見ると、やはり昨年末の結果からは、都市部の人出の増加が如実に確認できます(図は東京の平日の職場移動人口・パーソル総合研究所作成)。出勤者も増え、久しぶりにメンバーがそろうことで、出社の良さを感じたという職場が多く見られました。その一方で、経営層や上司に不要な出社を強制され、社員の気持ちが離れていた企業もありました。

 筆者は2020年から数万人規模の調査を繰り返してテレワークの動向をウオッチしていますが、日本のテレワークは、最初から「感染防止」の目的に特化されすぎた印象を受けます。働き方の柔軟性確保や多様な人材の活躍といったテレワーク本来の目的が矮小(わいしょう)化されているので、今後も新規感染者数の波に振り回されるように、出社率は増減していくでしょう。

 日本は国際的に見ても、テレワーク時の効率が低いことがいくつかの調査で報告されています。特に職務範囲が曖昧な日本のホワイトカラーにとって、職場内ではインフォーマルなコミュニケーションや細かな調整、相談は不可欠です。筆者はそうした職場コミュニケーションをうまくデザインし直す試みが希薄なまま、「テレワークはうちの会社には合わない」と判断し、結果的に無駄な出社が増えていくことに危惧を覚えています。