数値目標では社員がやる気にならない理由、「行動スイッチの入れ方」のコツとはPhoto:PIXTA

「売り上げ○○%増」などの新しい目標を立て、上司がいくら号令をかけて尻をたたいても、イマイチ部下の士気が上がらないと感じることはないでしょうか? それには理由があります。「行動イノベーション」メソッドで1万5000人以上の目標実現・行動革新をサポートしてきた筆者が、「行動に移せる目標の立て方」を伝授します。(目標実現の専門家、メンタルコーチ、株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役 大平信孝)

なぜ目標を「細分化」「明確化」しても達成できないのか

 仕事において、数値目標は不可欠です。というのも、会社という組織において目標が明確でないとしたら、それぞれが独自の判断や基準でバラバラに仕事をすることになってしまうからです。そして、数字による指標があることで、計画も立てやすく、進捗や成果も把握しやすくなります。会社においては、明確な数値目標があることで、初めてスタッフ全員が同じ方向に向かって仕事をすることができるので、継続的に利益を生み出し続けていけます。

 ただし、ここで注意しなければいけないのは、仕事の方向性を示すために必要不可欠である目標と、スタッフのやる気を引き出すための目標が必ずしも一致するわけではないということです。

 実際、「昨年の売り上げの10%増」といったチーム目標や個人目標だけで、「はい、わかりました! 目標を達成するために頑張ります!」という人は、まれです。むしろ、これだけではスタッフのモチベーションが上がらず、目標を達成しないまま終わってしまいかねません。

 これは、仕事に限りません。例えば、「1年以内にTOEICのスコア800点突破」を目指している人が、「今年は、100点スコアUPで、まずTOEIC730点を目指す」という目標を立てたとしても、いざ英語の勉強となると、進まないのです。

 なぜ、単に目標を言語化・数値化しただけでは、スムーズに行動できるようにならないのでしょうか?

 そこに「欲望」がないから、もっといえば、楽しくないからです。

 数値目標だけを立てても感情が動かないので、行動スイッチは入らず、達成できないのです。ましてや、会社や上司の作った数値目標を一方的に押し付けられるのでは、なおさらです。

 人は理屈ではなく、感情で動きます。

 いくら目標を明確化しても、感情を伴わない言葉レベルでの目標であれば、行動にはつながりません。「頭では行動したほうがいいと分かっているのに、行動できない」というのがこの状態です。

 人は、欲望がないと行動する意欲が湧いてきません。逆にいえば、自分が本当にやりたいことならいくらでも頑張れる、続けられる、成長できるという性質を持っています。

 欲望なき目標は、真の目標とはいえないのです。