今月から2023年卒業の学生らの就職活動が本格化した。コロナ禍でオンライン面接の機会が増え、選考フローも変化しているが、書類選考や面接を勝ち抜いて志望企業への内定を獲得するためには、「企業が応募者に求めていること」をきちんと理解しておくことが重要だ、という点に変わりはない。
そこでヒントになるのが、マッキンゼー・アンド・カンパニーの採用マネジャーを12年務めた伊賀泰代氏「いまの日本が必要としている人材像」を解説した『採用基準』(ダイヤモンド社)だ。
本稿では本書より一部を抜粋・編集して、「中途採用されやすい人とされにくい人」の働き方の決定的な違いを解説する。(構成/根本隼)

「中途採用されやすい人、されにくい人」働き方の決定的な違いとは?Photo:Adobe Stock

中途採用が難しいタイプとは?

 外資系コンサルティングファームでは、中途採用者の大半は30代前半までに入社します。このため、入社時の力の高低に加え、入社後の成長ポテンシャルの高さも重要です。

 ところが応募者の中には、それまで在籍していた企業で、成長に頭打ち感が出てきてから何年もたって、そこで初めて転職をしようと考える人がいます。これは最も採用が難しいタイプです。

 成長の頭打ち感を感じながら働いている人は、その間、チャレンジングな仕事をしてきていません。必死に挑戦しなければ達成できない仕事ではなく、粛々とこなしていればできるレベルの仕事をしてきています。こういう仕事を一定期間以上続けることは、さまざまな形でその人の可能性を減じてしまいます。

チャレンジしない人は知らぬ間に保守的になる

 人はチャレンジを続けていると、次々と新しいこと、より大きな仕事を手がけることが怖くなくなります。反対に、簡単にできる仕事ばかりやっていると、できないかもしれない仕事が怖くなります。毎日やっていればなんということはない自動車の運転でも、数年ぶりとなれば怖く感じるのと同じです。

 また、自分の実力を超えた仕事を任されている人は、「きちんと結果を出すべき重要な仕事」と「時間をかけるべきではないインパクトの低い仕事」を分け、優先順位をつけて取り組まざるを得ません。結果として、限られた仕事時間内においては、重要な仕事だけを手がけています。

 ところが、粛々とやればできる仕事ばかりをしている人は、大事な仕事もそうでない仕事も、すべて細部まで詰めて仕上げる時間的余裕をもっています。

 このため、高い視点で仕事の優先順位を見極める必要はなく、すべてにおいて重箱の隅をつつくような作業に没頭しがちです。

 このように、全力を出し切らなくてもできる仕事を何年も続けてしまうと、知らず知らずのうちに保守的となり、視点が低くなります。めいっぱい頑張らなくてもできる仕事をしながら高いスピードでの成長を続けるのは、誰にとっても困難なことなのです。

チャレンジする人としない人の成長スピードの違い

「中途採用されやすい人、されにくい人」働き方の決定的な違いとは?『採用基準』P.113より

 このため、図表5のように、面接時点での実力は候補者A氏のほうがB氏より多少上であっても、入社後の成長可能性を考えると、B氏を採用する場合もでてきます。

 もちろん、成長できない状態で数年間働いたからといって、一生リカバーができないわけではありません。しかし日本の大組織からマッキンゼーのような組織に転職することには、サッカー選手が海外チームに移籍するのと似たような変化が伴います。

 入社直後から成果が問われる組織への転職なのです。全速力で走ることができている段階でこそ、新たなものに挑戦すべきでしょう。

成長速度が鈍化していると感じたら環境を変えるべき

 面接を担当するコンサルタントは、面接の1時間の中でさえ、候補者がどの程度、成長するかを見極めようとしています。成長スピードの速い候補者は、面接中に聞いた相手の言葉からその場で何らかの学びを得て、次の質問ではすぐにそれを活かして回答を変えてきます。

 自分の実力を大きく超える仕事をしている人は、特別な勉強や訓練の機会を待たず、日常の仕事からも貪欲に学びを得ないと、必要なスキルを身につけることができません。このため常に“学びの臨戦態勢”を保っているのです。

 どこで働く人も、自分の成長スピードが鈍ってきたと感じたら、できるだけ早く働く環境を変えることです。もちろんそれは転職である必要はなく、社内での異動や、働き方、責任分野の変更でも十分です。

「ここ数年、成長が止まってしまっている」と自分自身で感じ始めてから数年もの間、同じ環境に甘んじてしまった後に転職活動をしても、よい結果を得るのは難しいということを、よく理解しておきましょう。

(本稿は、『採用基準』のP.111~114より抜粋・編集したものです。)