心を整えて非認知スキルを
磨く女子プロゴルファー、西郷真央さん
「ご機嫌」の価値を全員が意識するのには時間がかかります。大学のチームを担当することもあるのですが、難しいケースもあります。技術レベルが高く、高校時代に素晴らしい結果を残した選手が大学で競技を継続しています。しかしながら、すべての選手が「ご機嫌」の価値を体験として持っているわけではありません。中には、不機嫌の中で我慢しながら上達し、気合と根性で結果を残してきた選手もいます。まだまだそういった選手の方が多いかもしれません。
そうすると、なかなかこの価値が届きにくいものです。「機嫌よくやろう!」と伝えても、「楽をして、手を抜いてプレーしていいの?」となってしまう。真剣に取り組むことは同じなのですが、ご機嫌に取り組むことに違和感があるのです。
能動的に機嫌良くスポーツに関わる体験を、子どもの頃にもっておくことが大事ですね。指導者でも親でもいいし、祖父母が教えてあげてもいい。子どもの頃の体験は、偏桃体や海馬に残りますし、何かのタイミングで思い出すことでしょう。
ご機嫌でいれば必ず結果が出るという類のものではありませんが、「ご機嫌の価値」に気づいたことで、パフォーマンスを向上できた選手は多くいます。2020~21シーズンにアース・モンダミンカップ、日本女子プロゴルフ選手権で単独2位、資生堂レディスオープンで2位タイなど、メキメキと頭角を表してきた女子ゴルファーの西郷真央さんもその1人。
納得いくまで面談で質問を続ける彼女の姿勢に強い向上心を感じますし、それにご機嫌に取り組もうとしています。これまでの彼女は技術を最優先していたのですが、培った技術をどのように発揮するのか、心を整えるための構造に気づいてくれて、一気に変わった印象です。昨年の賞金ランキングは4位でした。まだまだ上を目指して、より強くなっていってほしいですね。ご機嫌や自然体な心を大事にする女子プロゴルファーはまだ少ないので、楽しみにしています。
スポーツでもビジネスでも、多くの人が自己投資をされていると思います。しかしながら、それをどういう気持ちで発揮するのかといった準備はな、されてこなかったかと思います。心を整えてご機嫌でいることの価値を、改めて考えてみませんか。
37万部突破の『スラムダンク勝利学(集英社インターナショナル)』をはじめ、『フロー・カンパニー(ビジネス社)』『自分を「ごきげん」にする方法(サンマーク出版)』『禅脳思考(フォレスト出版)』『Play Life, Play Sports~ スポーツが教えてくれる人生という試合の歩み方~(内外出版)』『(2/10発売予定)自己肯定感ハラスメント(フォレスト出版)』など著書多数
*スポーツドクター、作家・辻秀一氏に聞く(3)に続きます。