教育に関連する様々な事業で業界をリードしながら、さらなる進化を続ける総合教育カンパニー、スプリックス。同社代表取締役社長の常石博之氏による書籍『成し遂げる力 ニーズからすべてを始める 総合教育企業スプリックスのNo.1ブランド戦略』から、一部を抜粋して公開します。
最終回は、スプリックスが掲げるビジョンと、それを実現するために日々改善が遂行される企業としての推進力について紹介します。
塾業界のイメージを変え
塾講師のモチベーションを高めたい
スプリックスのコーポレートミッションは『「教育」を通して、世界中の人に「人生の新たなステージ(春)」を届けること。』です。そして、コーポレートビジョンとして、次の言葉を掲げています。
「世界中でスプリックスのメンバーだとプライドをもって言える会社にすること」
私は、顧客のニーズを追求すると同時に、塾で働く人材の地位向上も目指していきたいと考えています。
長年学習塾という業界に身を置いて分かった悲しい事実が、“自分の子どもは自分の塾には通わせたくない”という先生方が少なからずいるということです。その背景には、たびたび述べてきたように、有名進学校の合格圏内にいるトップクラスの生徒以外は“お客さん”として、とりあえず通って授業料を納めてくれればよいという思想が見え隠れしたり、営業ノルマをベースとしたクラス作りなどを知っているからでしょう。そのような塾に、自分の子どもを通わせたい親はいないはずです。私はまず、そこから変えたいと思っています。
うれしいことに、当社では森塾に通っていたかつての生徒が、成長してスプリックスに入社を希望したり、講師のアルバイトに応募してくるという流れができ始めています。かつてミドル層だった彼らですから、立派な大学生になっていること自体大変うれしいことです。中には、当時は想像もできなかった名門校に通っている学生もいました。森塾で講師のアルバイトをしていた学生が、就職先としてスプリックスを選ぶというケースも少なくありません。
苦手だった学習が楽しくなった子どもの頃の経験から、自分も子どもたちに成績が上がる喜びを教えたいという者、アルバイトとして子どもたちに関わってきたが、次は運営側に回って新たなサービスの構築に携わりたいという者など、動機は様々です。しかし、この流れは私たちが目指してきた塾の教育の形が間違いではなかったことの表れではないかと感じています。
一方で、学生自身が学習塾を就職先に望んだとしても、彼らの両親が反対するというケースも少なからずあるのが事実です。塾の講師が働くのは、子どもたちの学校が終わってから。つまり、夕方から夜間にかけてです。“夜の仕事”という時点で、親世代の中には望ましくないと感じる層がいるようです。銀行と塾の内定を同時に取ったら、とりあえず銀行を選べというでしょう。
それだけでなく、教育に携わりたいのであれば、塾講師ではなく公務員である教員を目指せという意見も根強くあります。売上のノルマをこなさなければならないような、ブラック企業のイメージもあるといいます。子どもの将来を心配する親の気持ちは、痛いほど分かります。しかし、時代による悪いイメージが残っているのなら、それを変えていきたいと私は考えています。