メーカー(製造業)の仕事は、自動車、電機、食品……などの商品をつくって売る「ものづくり」です。それを支えるさまざまな機能がありますが、「購買課」とは一体どんな仕事なのか、また「SRM」のとは何か……など、メーカーを目指す人ならぜひ知っておきたい基本について、書籍『全図解メーカーの仕事 需要予測・商品開発・在庫管理・生産管理・ロジスティクスのしくみ』から紹介していきます。
自前で作るか、社外から買うか
メーカーのものづくりは、何といっても商品を構成する原材料が揃わなくては始めることができません。社外から適切な品質と量の原材料を仕入れて、適切なタイミングで製造課にこれを提供するのは「購買課」の役割です。
購買課はメーカーの仕事の中では唯一、外部に対して「顧客」として接する点に特徴があります。この「買い物」は、「安く」「質の良いものを」「適切な量で」買うことができたかという観点に加えて、「社内にない技術を」「継続的に」買えるか、といった点がミッションの成否を分けます。
そのため購買課には、原材料の購入先との間で、原材料の性質に応じた関係性を構築することが求められます。このような原材料の購入先は、メーカーにとって原材料の供給元であることから「サプライヤー」とよばれ、サプライヤーとの適切な関係性を構築・維持する活動を、サプライヤー・リレーションシップ・マネジメント(SRM)といいます。これはCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)と対になる概念です。
サプライヤー・マネジメント
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購買課が原材料を仕入れる際は、「自社にとってどれくらい重要か」「調達できなくなる可能性はどれくらいあるか」という二つの側面から原材料の特徴を整理します(図8-4)。原材料の特徴ごとに次のようにサプライヤー・マネジメントをします。
●クリティカル(自社の商品に不可欠であり、かつ供給リスクが高い原材料):商品に不可欠な機能を担っていたり、商品全体の価値を決定づけたりするような原材料は「キーパーツ」とよばれる。このような原材料は、外部からの調達に依存すると商品を作ることができなくなってしまうリスクがあり、本来であればメーカー自身が内製すべきといえる。しかし、往々にしてキーパーツを作るには自社でもっていない技術が必要となる。このような場合、サプライヤーとの間では「共同開発」のように緊密で長期的な関係性を構築する必要がある。
●レバレッジ(自社の商品に不可欠であるが、供給リスクが低い原材料):商品に不可欠な原材料であっても、市場取引を通じて仕入れることができるなど、調達の容易なものについてはサプライヤーとの関係もそれほど緊密である必要はない。複数のサプライヤーから相見積もりをとるなど、より良い条件を追求するとともに、複数の仕入れ先を常に確保しておくことで、安定的な仕入体制を用意するなどの工夫が購買課に求められる。
●ボトルネック(自社の商品の価値に対する重要性は低いが、供給リスクが高い原材料):商品を装飾するパーツなど、主要な価値にそれほど寄与しないものの、サプライヤーの数が限られているものが該当する。例えば、環境規制の影響で年々調達が難しくなっているメッキ部品とこれを装飾パーツとして使っている楽器など。このような原材料についてはサプライヤー数が少ないため、安定的な調達を確保する観点より継続的な供給契約を結ぶなどの関係性の構築が購買課に求められる。
●コモディティ(自社の商品の価値に対する重要性が低く、供給リスクも低い原材料):商品の包装材料のように、商品の原価に占める金額的割合が小さく、かつ大量に必要なものが挙げられる。このような原材料についてはそのものの価格よりも取引に要する諸費用のほうが高価であることも珍しくないため、簡便に仕入れることのできるサプライヤーとの取引が優先される。その取引方法の究極的な形として「富山の薬売り」のようにサプライヤーに在庫管理と原材料の供給を任せてしまう「VMI(Vendor Managed Inventory)」方式がよく知られている。