非中央集権化を目指すWeb3の理想と
現時点でのジレンマ

 前置きが長くなりましたが、いよいよWeb3とは何なのか、改めて見ていきましょう。前述したように、Web3はブロックチェーンを中心に、中央集権的なプレーヤーが存在しないかたちで、本当の意味での自律分散的なシステムを生み出そうという概念です。

 Web3を構成する技術やサービスの中でも特に期待が集まっているのは、非代替性トークン(Non Fungible Token、NFT)です。ほかに分散型金融(Decentralized Finance、DeFi)などの概念も重視されていますが、NFTは特にWeb3を象徴するものではないかと思います。

 NFTとは、簡単に言えば画像や音楽、動画データなどのデジタル資産に対する真正性、オリジナリティを証明するものです。ブロックチェーンの仕組みを使うことによって、二次流通後もオリジナルコンテンツの製作者に金銭的なインセンティブを戻す機能を持たせることも可能です。今までのデジタルコンテンツは、「いくらでもコピーができる」というデジタルデータの特性から、製作者が対価を得ることが難しいという性質がありました。NFTはこれを解決するものとして、経済的にも面白い仕組みであると注目されているのです。

 ただ、NFTを実際に売買するとなったときに、「誰がどこでやるのか」が次の課題になってきているのではないかと個人的には考えています。売買の場としてマーケットプレイスのようなものをつくるとすれば、そのマーケットプレイスを主催する団体(多くの場合は企業)が存在することになります。これは「誰か」がそのマーケットプレイスを所有、あるいはコントロールすることを意味します。

 実はブロックチェーンを活用して、誰かの支配によらない分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization、DAO)と呼ばれる透明性の高い組織づくりを行い、マーケットプレイス自体を非中央集権化(Decentralize)することを目指す人たちもいます。真にWeb3が目指すことを実現するには、やはり非中央集権化、分散化は必要でしょう。とはいえ、そのためには今後さまざまな努力が必要です。現時点ではやはり「NFTではあるけれども、何らかのプレーヤーが提供する場で取引される」ということも多くなると思われます。