これはグーグルに限らず、メタ(旧フェイスブック)やマイクロソフトなどにも言えることです。巨大なITプラットフォーマーがウェブのある領域を独占しているという懸念は、開発者や国家機関、一般ユーザーの間でも強くなってきています。
そこで、本来ウェブの持っていた「中立で誰もが所有していない」という性格を持つ仕組みとして、Web3に期待が集まっているのです。それを実現するのは、暗号通貨ビットコインの公開取引台帳として生まれたブロックチェーンとウェブとを組み合わせた技術です。
Web3には“ウェブ”という名が付いているものの、2.0までのいわゆる狭義の「ワールドワイドウェブ」「情報通信技術としてのウェブ」とは異なります。Web3はブロックチェーンを発端とするいくつかの技術の組み合わせにより、支配的な巨大プレーヤーを介さない情報のやり取りなど、さまざまなサービスをインターネット上で実現したいと考える人々から、期待されている概念なのです。
ウェブや電子メールの普及は
偶然の産物だった?
そもそもWeb2.0時代の初期の頃までのウェブや電子メールといった基本的ツールの普及は、一種の偶然の産物が成せる技だったのかもしれません。ウェブにせよ電子メールにせよ、今、ゼロの状態から誰かが規格を標準化団体に提唱しても、標準化できるかは疑問です。もし標準化できたとしても、普及させるのはかなり難しいことだと思います。
インターネット上で動くアプリケーションとしてのウェブや電子メールを、企業の垣根を越えて真の意味での相互運用ができるようにすることは理想です。しかし今、ウェブや電子メールがなかったとして、独自でそれらを開発した企業がいたら、当然それぞれがユーザーを囲い込みたいと考えるでしょう。
実際、電子メールシステムの世界では当初、相互運用は行われることはありませんでした。企業はIT企業各社が提供する別々のシステムを利用していて、横同士をつなぐための標準も規格化までは行われていました。しかし、各社が横同士でメールのやり取りができるということは、システムを開発した側からすれば、自社のユーザーにならなくてもコミュニケーションが成立してしまうということでもあります。
ところが草の根的に始まり、最初はオモチャだとみられていたインターネットの電子メールは、できることが限られるものの、各社のメールシステムより先に浸透してしまいました。そこで「今あるものをつなぐより、むしろこちらを中心に使った方が便利なのではないか」ということになり、さらに利用が広がる結果となりました。