少子化、定年70歳時代
元気で働けることこそ会社の底力

 従業員個人の健康になぜそこまで、とお考えの方にいいたいことがあります。これは、安全第一、健康第一であると同時に、少子高齢化時代への対応なのです。

 少子化時代、なかなか新入社員は入ってくれません。まして、地方の製造業です。

 そして、効率化、省人化が進むほど、従業員は「多能工」化し、少数精鋭になっていきます。少しでも長く、元気で働き続けてくれることに、労使双方にメリットがあります。

 本人が引退したい、老後を楽しみたいと思う日まで、十分な給与とともに仕事を続けて欲しいと願っています。

 私も実際に経験したのですが、人によっては60歳を過ぎてから、最高のパフォーマンスを発揮するケースもあるのです。

 一昔前なら、もう退職してしまった後。せっかくのやる気、熱意を、病気で失うことがあっては残念です。

 まして、同じだけのスキルを持つ人間をゼロから育てるのも大変な苦労です。

 少子高齢化だ、定年70歳だと慌てているヒマがあったら、従業員が健康に仕事できるよう、積極的に関わっていくことが大切な時代になっていると確信します。

(本原稿は、平美都江著『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』から一部抜粋・改変したものです)

平 美都江(たいら・みとえ)
平鍛造株式会社前代表取締役社長。現在は株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長。1956年東京都生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に、『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか――父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。