ロシアとウクライナ、宗教の歴史

 2018年8月31日から9月4日まで、トルコのイスタンブールにおいて「シノド」と呼ばれる正教会主教会議が開かれました。そこでコンスタンティノープル正教会総主教であるバルトロメオ1世は、ウクライナに2人のコンスタンティノープル総主教代理を派遣する決定を行います。

 それまでのウクライナ正教会は、「ロシア正教会モスクワ総主教庁系」と「ウクライナ正教会キエフ総主教庁」に分かれていましたが、これを統一して、ウクライナに独立した正教会を作りたいという動きがありました。この動きはソビエト崩壊によるウクライナ独立の時からありました。

 現在のウクライナに存在する正教会は、17世紀以降は「ロシア正教会の管轄下」にありました。1917年のロシア革命にさいし、「ロシア正教会」の一教区ではなく、「ウクライナ正教会」として独立すべきではないかという議論がなされ、それ以後、「ウクライナ正教会としての独立は悲願」となっていきます。

 しかし、ロシア正教会はウクライナの教会独立は認めようとはしませんでした。そのため、ウクライナには大きく3つの正教会が併存します。

① ロシア正教会モスクワ総主教庁の管理下に置かれたウクライナ正教会
② ①から勝手に独立。先述の独立を悲願として活動してきたウクライナ独立教会
③ ①から勝手に独立。ウクライナ政権からの支持を得て活動してきたウクライナ正教会(キエフ総主教庁系)の3つです。

 それぞれの関係性を見ていきましょう。