――「別のやり方」を考える視点を持って、自分の仕事や自分のやり方にどのくらいの価値があるのか客観的に分析したり、相対的に見るように意識したほうがいいということですね。
平尾 そういうことです。ビジネス市場は1兆、1000億、100億といった規模の大小はあるものの、同じ市場の中で得られる果実を何人がどのくらいずつ獲得できているのか? という世界ですから。当然、ライバルは少ないほうがいいですし、他と同じやり方では負けてしまいます。少子高齢化やグローバル化が進んでますます競争が激しくなるのは明らかですし、物価も今後はどんどん上がっていくでしょう。
けれども日本は安くても美味しい食事ができるほど、生活しやすい国です。今のところは。だから、これから日本は衰退すると言ってもピンとこない人が多い。でも、私の本を読んでくださる方はきっと危機意識が強いと思うので、早めに別解力を身につけてほしいのです。
ただ、さまざまなパターンで別解を導き出せるようになっても、実践してみなければその成果はわかりません。逆に、何の準備もせずに走りながら考える人は、とりあえず行動してたいてい失敗します。仕事やビジネスはそれほど甘くはありません。だから、たとえ失敗しても大きく転ばないように、行動する前には最低数時間はかけて複数のプランを考えておく必要があるのです。そのときこそ別解力が役立つはずです。
「正解」を求めてきた優等生こそ起業家の思考法が武器になる
――じげんは、あらゆるライフメディアを統合した「プラットフォーム オン プラットフォーム」という新しいビジネスモデルで日本最大級のマッチングプラットフォームをつくりました。それこそ別解ですよね。
平尾 ずっと起業家思考を鍛えてきたので、別解を思いついたのは早かったんです。「アルバイトEX」からのアグリゲーションは求人案内というすでに成熟した市場でも、別のやり方で実現できた別解の例です。
起業家には天才肌の人もいますし、BtoCで成功し続けている人もいます。私には、そのような才能はありません。どちらかというと、努力して優等生を目指してきた人が起業家になったパターンですね。
でも世の中は、天才型より優等生のほうが圧倒的に多いので、私のパターンは再現性があるはずです。『起業家の思考法』も再現性のある内容として書いたので、ビジネスパーソンもフリーランスの方にも役立つと思います。
「別解力」で生み出せるチャンスはゴロゴロ転がっています。私の本を読んだ方には、ぜひバッターボックスに立ってホームランを打ってほしいですね。
【第3回へ続く】
【第1回】「正解がない時代」でも成果を出せる人たちの共通点、「別解力」とは?
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。