【6】メンタルケア

 コロナで特に入社したばかりの人や、これまで会社にずっといることが当たり前という働き方をしている人たちの間でメンタルを病む人も増えているとも言われるが、これは毎日会社に行って、人に会っていれば、雑談めかして同僚や上司や部下にちょっとした愚痴をこぼしたり、「タバコ部屋」などで、別の部署やチームの人と「そちらはどうですか」「いやあ、○○みたいな状況になっちゃって、勘弁してほしいですよ」などと言い合ったりすることで、程良い「ガス抜き」ができていたのが、リモートワークではなかなかガス抜きの場が作れないということに原因があるだろう。

 上司は20分程度の短い時間であっても定期的に部下とワン・オン・ワンの時間を持つなどして、異変に気づくように努力せよということもできるが、上司がワン・オン・ワンに時間を取られて、メンタルを病みがちというのもまた決して笑い話ではすまされない現実である。1から5以外に6についてもリーダーがケアをできれば申し分ないが、メンタルのサポートについても真剣に仕組みや専門の人員を配置することを考える必要があるだろう。何十社も掛け持ちで月1回会社に来るか来ないかという産業医(最近では産業医が主体的、戦略的に健康経営に寄与する例もあるが)に任せて終わりでは到底解決できないのだ。

 以上である。

プロジェクトマネジメントは
管理職研修の必須科目に

 さて、このように書いてくると、うちの会社のリーダーにそんなにたくさんの能力を求めても無理と思われる方もおられるだろう。しかし、人が直接顔を合わせないままに仕事を進めていってもうまく回る組織を作るには、このような卓越した能力を持つリーダーが不可欠なのである。

 この能力は入社し10年くらいたてば誰にでも自然に備わるものではなく、素養のある者が自己研鑽を積み、機会を得て初めて得られるものである。したがって、このような人の業務遂行能力は普通のリーダーよりも明らかに高く、少々高い報酬を出してもおつりがくる。本当にリモートワークを中心にして組織運営を進めていこうとするのであれば、プレーヤー兼任の管理職や、ローテーションによる素人上司の任命はやめなければならない。そんな上司で業務を回すことは不可能だ。そして、リーダー候補の発見と育成に格別の投資を行わなければならない。

 そのようなリーダーが数多く輩出されるまでには時間がかかると思われるが、そのためにまずやるべきは1と深く関わる、PMのスキルの習得である。管理職研修でPMを必修にするくらいのことが必要である。これができていなければ、どこかでまずいこと(プロジェクトの遅延、トラブル等)が起きていても、それが、実際に目に見える形になるまで、つまり、すでに取り返しがつかない段階になるまで誰も気づかないということが起こる。繰り返すがPMができる人が上司であるべきで、そういう人がリーダーであるべきなのだ。断じて「誰かに適当にさせておけばいい仕事」ではない。

 まずはリーダーがこのスキルを持つか持たないかで、組織の生産性は大きく変わるし、個々のメンバーも、たとえリモートワーク下であったとしても、自分が今どこにいるかについて見失うことはなくなるだろう。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)