スポーツの語源は「Deportare」。「遊び」という意味を含むラテン語だといわれています。スポーツを通して、新しい友達と良い関係を構築し、自分の立てた目標をクリアしていく。そうすることで、自然に自制心や自律心が育まれるのです。スポーツは、思考を行動に変化することで成り立ちます。教室で知識を詰め込むだけではなく、スポーツを通して実際に行動し経験する方が、落とし込みやすいのではと思います。“真剣に遊ぶ”ということが、こういった感性を伸ばすきっかけになるのです。

「結果」は重要だが
それだけだと本質から離れてしまう

 その中で注目したいのは、結果です。結果が見えるからこそ、自分の中で内省し、上達するための工夫をする。挑戦の継続にも繋がりますよね。自分自身を把握するという意味で、結果を求めて挑むことは大切なことだと思います。

 ただし、結果にこだわりすぎるとそれもリスクになります。今の学校スポーツでは、トーナメント戦とリーグ戦が混在しています。トーナメント戦だと、負けたら終わり。なので、失敗を恐れるシーンが増えます。結果、「俺の言う通りにすれば勝てる」という指導者が現れやすくなり、そしてその指導者に対して疑問を持ちにくくなりますよね。

 それでも、短絡的に指導者の言うことだけ聞いていれば勝ててしまうこともあります。挨拶する意味もわからないまま形式的に挨拶している人もいるように、スポーツをする本質を理解しないままスポーツをしている人もいる。これでは、スポーツを本当の意味で楽しんでいるとは言えないかもしれません。

 スポーツは勝利を目指す過程で、上達するために厳しい練習に取り組んだり、時に怪我をしたり、また試合に負けたりと様々な苦難がありますが、それを含めて楽しむことが大事になります。結果も残したいし、楽しみたい。そんな二律背反な構造になっているのです。そうしたことに折り合いをつけて、主体的に付き合っていくものではないかと思います。

 スポーツは「プレーする」と言いますが、音楽でもゲームでもプレーが使われます。嫌々プレーするものではなく、皆楽しいからプレーする。主体性、思考力、表現力など数値化できない能力を育む意味で、スポーツの真の価値が理解され、もっと活用されるようになるといいですね。

中村聡宏(なかむら・あきひろ)/一般社団法人日本スポーツマンシップ協会代表理事。千葉商科大学サービス創造学部准教授。1973年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。印刷会社に入社し、スポーツポータルサイト『スポーツナビ』立ち上げのプロジェクトに関わるなど、広告、出版、印刷、ウェブ、イベントなど多分野の企画・制作・編集・運営等業務に従事。独立行政法人経済産業研究所では広瀬一郎上席研究員とともに、サッカーワールドカップ開催都市事後調査、「Jリーグ発足時の制度設計」調査研究プロジェクトなどに参画。また、スポーツビジネス界の人材開発育成を目的としたスポーツマネジメントスクール(SMS)を企画・運営、東京大学を皮切りに全国展開。2015年千葉商科大学サービス創造学部専任講師に就任。21年より准教授。18年一般社団法人日本スポーツマンシップ協会を発足し、代表理事に就任するなど、スポーツマンシップ教育を展開する。著書に『スポーツマンシップバイブル』(東洋館出版社)

*「日本スポーツマンシップ協会代表理事会長・千葉商科大学准教授、中村聡宏氏に聞く(4)」に続きます。