私は営業や見込み客開拓について書かれた本を読み漁ったが、全部捨ててしまった。言っていることはどれも同じで、役に立たなかったからだ(1980年代なら役に立ったかもしれないが)。

「インサイドセールス」という分業体制

 何の手がかりもないゼロから始めなければならない感覚に苛立ちを覚えたが、最終的に私は、見込み客開拓の新しいプロセスを設計し、インサイドセールスのためのチームをつくった。

 それまでのやり方を一新して、このチームはコールドカンパニーを対象とするアウトバウンドの見込み客開拓だけに専念させた。リードを獲得し(リードジェネレーション)、関係を深め(リードナーチャリング)、社内で定義した一定の条件を満たしたことを確認して(リードクオリフィケーション)、商談案件としてアカウントエクゼグティブ(クロージングを担当する営業担当者)に引き渡すことだけを彼らの仕事とした。

 コールドカンパニーというのは、まったくコンタクトを取ったことのない新規企業か、過去に関係があったが、最近6ヵ月以上アクションがない会社である。インサイドセールスはそれをターゲットにして掘り起こしていくのだが、コールドコールは行わない(それは役に立たないという発見から始まった改革なので当然のことだ)。

 インサイドセールス・チームは、口コミやマーケティング活動やウェブ経由で入ってきたリード(インバウンドリード)は扱わない(それはマーケットレスポンスという別のチームが担当した)。クロージングをしないだけでなく、営業担当者が成約した注文の事務処理も行わないし、マーケティングの手伝いもしない。

トレーニングとチームマネジメント

 新しい方式で毎年繰り返し成功を収められるようになったのは、このような役割分担に加え、次の2つの重要な要素があったからだ。

(1)営業担当者トレーニング
 私たちは新しいプロセスに対応するために営業担当者をトレーニングした。それは彼らの成功を後押しし、95%の営業担当者の成績が向上した。

(2)自らをマネジメントする営業チーム
 私たちはすべてをシステム的に行った。私自身も含め、だれか1人がボトルネックになってチームの成功が妨げられるようなことは避けたかったからだ。だれかが交通事故に遭ったら業務がストップするようなシステムは、システムとは言えない。チームが成長し、成功するためには、チーム自体が自らをマネジメントできることが必要だ。

 CEOや経営幹部が営業に首を突っ込まなくてもよくなれば、売上げはスケーラブル(拡大可能)になる。それなのに、体制改善には手をつけず、いつまでもトップ営業に頼っている企業が多いのが実情だ。