いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。
誰にでも使える情報のなかに宝が眠っている
株式投資の世界で勝率60%を目指すためにはどのようなアプローチが有効なのでしょうか?
まずは投資のプロの世界で起きていることを説明しましょう。
人間の脳の機能は、大きく「入力」「情報処理」「出力」の3つに分けて考えることができます。これは運用の世界でも同様です。証券会社のアナリストに当てはめれば、これらの3つの機能はそれぞれ、「入力=情報収集」「情報処理=分析」「出力=運用者へのプレゼンテーション」ということになるでしょう。
勝率を上げるなら「入力=情報収集」か「情報処理=分析」で差別化する必要があります。
「情報処理=分析」については、現在の運用業界ではほとんど同質化してしまっています。これは、ここ5~10年の間にそれぞれの証券会社が独自に業績評価のモデルを決め、アナリストがそれに従って一律に数字をつくるようになったことが大きな要因です。
では「入力=情報収集」についてはどうでしょうか。
昔はアナリストにとって「誰に話を聞けるか」が重要でした。しかし、現在はフェアなディスクロージャー(情報開示)の重要性が高まった結果、情報収集先も限定されています。そのような環境の変化に伴い、「地を這ってでも、ほかの人が持ってない情報をかき集めよう」という気骨のあるアナリストは姿を消してしまいました。
近年は「とりあえず」「ここだけ押さえておけば」といった緩い姿勢で情報収集する人が圧倒的に多いと感じます。
このような状況の中、注目を集めているのは「オルタナティブデータ」です。
オルタナティブデータとは、資産運用の世界で伝統的に使われてきた経済統計などとは「別のデータ」のことを総称した呼び方です。
たとえば、近年はクレジットカードの決済情報やサイトへのアクセス状況などの多様なビッグデータが解析されるようになっています。
こうしたデータを活用することは「入力=情報収集」で差をつけることにつながるでしょう。実際、アメリカのヘッジファンドでは100人単位のオルタナティブデータ活用チームを擁しています。残念ながら日本はこの分野で遅れており、関心のある一部の運用者のみが活用するレベルにとどまっているようです。
お金を出せばさまざまなオルタナティブデータにアクセスできる昨今ですが、その予算も人力も足りない場合はどうすればよいでしょうか?
私は、誰にでも使えるデータの中にも有効なものがまだまだあると思っています。